・Talk Talk
「さっきのハムエッグ、美味しかったね」
「そうだな。腹が減ってたし」
「それって、私の料理の腕は関係ないって言いたいわけ」
「そうじゃないって」
「まあ、いいや……今、すっごく気分がいいし」
「真夜中にのんべんだらりとビールっていうのも堕落してるねぇ」
「いいでしょ。どうせ、明日は休みなんだし」
「もう日はまたいでるから今日じゃね?」
「そういう細かいこと言うからモテないんだよ」
「別に今はモテなくてていいだろ」
「……それもそっか。その方が私も楽だし」
「なんか含みのある言い方だな」
「別に。ただ、もうちょっとお酒飲みたいなって」
「もうその辺にしといたらいいんじゃないの」
「いいじゃん、どうせ明日休みなんだしさ」
「それさっきも言ったし、まだ酔ってるでしょ」
「はぁ~……仕方ないな」
「何にしろ飲みすぎは良くないしな」
「って言いながら、あんたも飲んでるじゃん」
「こっちはまだ飲み足りないんだよ。全然酔えないし」
「私と同じくらい飲んでるじゃん」
「お前と俺じゃ、酒の強さが違うんだよ強さが」
「そんなこと言って、いつも潰れるじゃん」
「……もう少しくらい大丈夫だって」
「いつも言ってるね、それ」
「今日こそは、大丈夫だ。うん……大丈夫」
「その言い方、絶対大丈夫じゃないし」
「いいだろ、今日くらい。もうちょいさ。なぁ」
「じゃあ、私ももう少し飲ませてよ」
「やめとけって。それこそ潰れるぞ」
「いつも調子に乗って介抱されてるやつに言われたくないし」
「ちょっと……落ち着きなって」
「……そうだね。かっ、とし過ぎたかも」
「深呼吸でもしといた方がいいんじゃないのか」
「……一言多い。そういうとこだよ」
「何がだよ」
「……いいよ。独り言。気にしないで」
「とりあえず、あと一本ずつ飲んで考えるってことでどう? ちょうどあと一本ずつあるんだし」
「そうだね。それくらいがちょうどいいかも」
「ってか、思ったより早く減ってたんだな」
「……さっきはごめん。ちょっとカリカリしてた」
「……いいよ。こっちも一言多かった気がするし」
「……本当にそう思ってる?」
「どういう意味だ?」
「……ごめん、なんでもない。それより、飲も」
「そうだね。まだ、飲みはじめてからそんなに経ってないし」
「とは言ったものの、夜明けも近付いてるよね」
「なんとなくこの感じ、大学の時っぽいね」
「言われてみればそうかも」
「よく徹麻とかしてたな。……あれからもう何年くらい経ったっけ」
「ひー、ふー、みー……三年くらい?」
「まじで? もうそんなに経ったのか……」
「あっという間だったよね」
「ああ、本当にな。これじゃ、残りの人生も案外あっという間なのかも」
「そんなこと言わないでよ。怖いじゃん」
「とりあえず言ってみただけだって。そんなに気にしなくてもいいだろ」
「……そういうことを今は忘れたいの」
「ちぇ……悪かったよ。せっかく酒飲んでるんだしな」
「……こっちもちょっと気にし過ぎたね」
「ちょっと気分を変えようか」
「この時間だと、たいした番組やってないね」
「ニュース、ショッピング……あっ、これとか」
「海、それと島……」
「たまに深夜にかちゃかちゃやってると映ってるよなこういうの」
「こんな時間まで起きてなに見てるの?」
「バラエティとかアニメとか、そういうのを、時間がある時に、ちょっとな」
「あんたのよく見てるアニメって、なにが面白いかよくわからないよね」
「うるせぇよ。っていうか……てか、自分でもよくわかってないかも」
「どういうこと、それ?」
「そりゃ、楽しんでる時は心から楽しんでるけどさ……半分くらいはぼんやりと眺めてるだけだよ」
「楽しくない時はなんで見てるの?」
「だから言ってんじゃん。よくわからんって」
「……わけわかんない」
「まあ、そういうこともあるんじゃない」
「わかんないよ……まあ、いいけど」
「ありゃ、缶が空だな」
「残念賞」
「お前弱いんだし、分けてくれるとか……」
「嫌だよ。まだ飲みたいし。あんただってチューハイ分けてくんなかったし」
「そこをなんとか、この通り」
「そんなに飲みたいんなら、自分で買ってくればいいんじゃないかな」
「今歩くのはめんどいし……」
「だったら、もう寝れば」
「うーん……それもなんかな」
「煮え切らないやつ」
「……わかったよ。行けばいいんだろ行けば」
「ついでにで、いいんだけどさ……」
「全員、あと一本って話じゃなかったっけ?」
「予定は未定だし、明日は」
「はいはい、休み休み。仕方ないから、買ってくるよ。けど、吐くまでは飲もうとするな。弱いんだし」
「大丈夫だよ。私のことは私が」
「わかってないみたいから言ってるんだが」
「早く行ったら。飲みたいんでしょ」
「ちぇ、わかったよ。じゃあ、またな」
「いってらっしゃい」
「……いってらっしゃい。ついでに」
「ああ、つまみもだな。俺もちょうど腹減ってるし。じゃあ、行ってくる。二人とも気を付けてな」
「行った?」
「うん、たぶん」
「本当にムカつくよね、あいつ」
「あれは、君のことを思ってじゃないかな」
「違うよ、ちゃらんぽらんで雑な男なだけ」
「その意見には友人として異議を唱えたいけど……」
「なに、あいつとできてるわけ?」
「僕、男なんだけど」
「最近だと、性別とかってあんまり関係ないんでしょ?」
「少なくとも僕の彼に対する好きはそういうのじゃない……と思う」
「ちょっと言いよどんだあたり、怪しいなぁ」
「第一、僕は好きな人は一人って決めてるし」
「……そこに誠実さとかは問わないわけ?」
「……誠実なつもりだよ。少なくとも君に対してはね」
「じゃあ、あいつに対しては?」
「……………………」
「ごめん、ちょっと意地が悪かったね。……それじゃあ、あんまり時間もないし、できるかぎり楽しもうか」
「…………うん」
「……はぁ。めんどくさ」
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