第24話 亜理寿さんといる場所
その1 説明、そして
目を開けると見慣れた気の天井が見えた。
間違いなく家の僕の部屋だ。
でも何か違和感を感じる。
そうだ、確か僕は駐車場へ向かう途中で……
亜理寿さんは!
慌てて起きる。
窓の外は暗い、
壁の時計は八時を指している。
今の処僕の身体に火傷や傷等は感じない。
急いで部屋の外に出られる程度の服を着て部屋を出る。
亜理寿さんの部屋は閉まっている。
中を開けて居るかどうか、大丈夫かどうか。
確認したいけれど取り合えず下へ。
リビングの方に何人かの人の声と紅茶の香り。
そっちに亜理寿さんもいるかな。
そんな訳で僕は階段を降りて、リビングの扉を開ける。
いたのは真理枝さん、美鈴さん、それに抜田先輩、美智流先輩、深川先輩だ。
「亜理寿さんは?」
「大丈夫、怪我とかは無いから。単に魔力の使いすぎで寝ているだけ」
真理枝さんがそう答えてくれた。
「火傷とか傷とかは?」
「大丈夫さ。年の為緑ちゃんに全身確認して貰った」
「私の力に誓って亜理寿の身体に怪我等の異常は無いのだ。心配は必要無いのだ」
それでようやく少し安心出来た。
「あと授業は文明の分も亜理寿ちゃんの分も全部、ちゃんと代返しておいたからね。出席を取る授業は欠席三回で再履修になるから」
「すみません、ありがとうございます」
そこまで手を回してくれたのか。
なかなか申し訳無い。
「それで津々井君はどこまで起きた事について理解しているのかな。悪いが口羽に襲われたところから話してくれないか」
抜田先輩にそう聞かれた。
「そうですね。まずは日曜日に……」
亜理寿さんが臣従魔法をかけたところから僕は話し始める。
◇◇◇
「鳴瀬先輩の仕業だな、やっぱり」
抜田先輩の台詞に美智流先輩と深川先輩の二人が頷いた。
「どういう事ですか」
「津々井君に臣従魔法について教えた人物のことさ。ついでに言うと口羽の魔法を使えなくしたのも、最後に津々井君と城間さんの火傷や怪我を全部治したのも、おそらくは鳴瀬先輩だろう」
鳴瀬先輩の事は聞いた事がある。
確かここの四年生の男性亜人で仙人だったかな。
「なら鳴瀬先輩にお礼を言っておかないとならないですね」
「いいや、鳴瀬さんにはそういう普通の心遣いは無用だ」
抜田先輩がそんな事を言う。
「鳴瀬君の行動基準は私達にはわからないんですよね」
「あの人はもう向こう側に行ってしまった人なのだ。人間とは既に別の世界に生きているのだ」
「どういう事?」
真理枝さんが尋ねる。
「神通力がある程度以上使えるようになると、普通の人間とはまた見る世界が変わってきてしまうんだ。原因と結果が時間順で無く閲覧出来て、そこに自由に手を加えられる存在、そんな存在から見える世界を想像してみればいい。おそらく物の考え方や行動原理なんかが大きく変わってくる筈だ。
ここにいる三人は神通力をそこそこ使える。でもさっき言った世界がうっすらわかるかな、という範囲までしか到達していない。だから基本的にぎりぎり普通の人間と同じ次元で考えて行動する訳だ。でも鳴瀬さんはその先に行ってしまった。もちろん人間として会話も出来るし付き合うことも出来るように見えるけれどさ、本質的にはもう向こう側の存在なんだ。神とかそういった世界のさ」
「抜田も能力的にはその世界に到達していると思うのだ。ただ、わざとこっちの世界に残っているような気がするのだ」
「まあその辺はおいておいてね。だからまあ、鳴瀬さんにはその辺の気遣いは無用だよ。勿論感謝するのは自由だけれど、彼の行動原理は多分僕達にはわからない」
神通力持ち三人がそう言うという事はきっとそうなのだろう。
僕はあの抑揚の無い魔法音声を思い出す。
確かに感情という物は感じられなかったな。
でもそんな存在が学生をしているというのも何か妙というか面白いというか。
「さて、僕らが来たのはその辺の説明のためとか本当に身体に影響が無いのかを確認するためとか理由は色々あるけれどね。もう一つ大きな理由があるんだ」
深川先輩が大きく頷いて口を開く。
「簡単に言うと、リア充爆発しろなのだ」
えっ、何ですかその台詞は。
「今まで相当に亜理寿ちゃんが文明にアタックしているんだけれどね。文明は全然それに気づいていないでしょ」
えっ? 真理枝さん今何と?
ちょっと待った!
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