その5 勘違い男vs口の悪い皆さん
そんな訳で結構色々危険な話が出ながらも和気藹々という昼食の途中。
「あ、話題の主役が来た」
美璃香さんの台詞に亜理寿さんがびくっとする。
「どれだどれだ」
「あれ、あのちょい茶色のマッシュルーム髪」
「あのロマンスが有り余りそうな奴か」
「その例え古い! でも適切かも」
「ゲスの極みって奴?」
「それそれ」
確かに松本の例えは見た目として正しい。
「まあ城間さん、心配しないで大丈夫。皆で追い返してやるから」
「そうそう、こっちも人数いるしね」
確かにこの女子三人組はなかなか強力な気がする。
さっきから長尾に負けない危険発言を色々やっているし。
長尾達と来て正解だったなと僕が思っているくらいだ。
こんな連中一人で相手したら僕まで酷い目に遭いそうで。
ストーカー君はお盆を持ってこっちにやってきた。
「駄目だよ亜理寿さん。探したじゃないか。昼食の場所を変えるなら俺に言ってくれないと」
「出たー! 勘違い発言」
美璃香さんが攻撃を開始する。
「凄いな、ドラマとかでなくこんな台詞言う奴始めて見た」
長尾も攻撃を開始した。
単なる本音かもしれないけれど。
「さあ、こんな連中は放っておいて、俺と二人で語りあおう」
「嫌です」
「そう恥ずかしがらなくてもいいから」
「うわー、定番の勘違い発言!」
これは美璃香さん。
「教室でもこんな恥ずかしい事を言っているんですか?」
松原も加わる。
「そうそう、それでうちの女子からは総スカン食っているの」
「嫌がっているのをそう捉えるなんて凄いポジティブだな」
「どっちかというと利己的とかそっちじゃない?」
「天上天下唯我独尊って奴か」
「それそれ」
これもチームワークというのだろうか。
「普通はこの辺で諦めるんじゃ無い?」
「面の皮が人一倍厚いんだろ」
「実測値どれ位だろ」
「確か男性の平均で2.3ミリっていうデータがあったと思う」
「なら5ミリくらいあるんじゃない。平均の倍以上ってところで」
皆さん容赦無い。
「亜理寿さん、こんな下賤な連中は君には似合わない。さあ行こう」
彼は亜理寿さんの肩を掴もうとする。
「嫌です」
彼はびくっと手を引っ込めた。
今のは見えないけれど多分魔法攻撃があったんだろうな。
「我が儘言わないで」
「うわ、凄い勘違い発言!」
「我が儘なのはそっちだよな」
「日本語が不自由なのよ」
「もしくは脳みそが不自由だとか」
「いわゆる認知のバイアスという奴だね」
「臨床心理で論文一本書けるかも」
「黙っていればそこそこイケメン風だよな」
「駄目駄目、こういったいかにもってのは付き合っていて深みが無くて」
「普通はここまで言われると引くよな」
「やっぱり面の皮が厚いんだよきっと」
「これからは通称五ミリってどうだ」
「まあ小さい。先っぽだけ」
「こらそれ男子の前で言うネタじゃ無い!」
何かもう酷い。
顔がこわばっていた亜理寿さんすら苦笑している。
「それにしても打たれ強いよな。俺ならとっくに逃げ帰っている」
「多分神経か性格に異常があるのよ」
「でもこの強さは見習うべきかもな」
「反面教師としてね」
「何で俺のこの真摯な愛に気づかないんだ!」
「紳士じゃなくて変な人だよな」
「多分それシンシが違う」
「変態紳士という言葉があってだな」
「あ、それ知ってる。主にロリコン系で使うよね」
「ひょっとしてロリコン?」
「何でもいいから彼女欲しい派」
「うわあ正直すぎて引く」
「でもアレよりましだよね」
「そう思うなら誰か紹介して」
「袖の下次第かな」
「うわあ現金」
冗談だよね、皆さん。
長尾のはきっと本音だけれども。
そして通称五ミリ君はついに心が折れた模様。
「残念だ。亜理寿さんともあろう人がこんな俗な人達と付き合っているなんで。でも俺は必ず亜理寿さんを真の愛に導いてみせる」
そう言い残して去って行く。
「どうもご協力ありがとうございました」
取り敢えず皆さんに礼を言っておこう。
「でもまだまだ続くと思うよ。教室でもこれくらい言っているけれど治らないから」
「ねえねえこの人が城間さんの彼氏?」
そういう事なら自己紹介しておこう。
「工学部情報科学科の津々井と申します。宜しくお願いします」
「こいつら同居しているらしいぜ。部屋は別だけれど」
「うん聞いている。帰りは彼氏の車だから大丈夫って言っていたし」
「ラブラブでいいよな。なお俺は同じく情報科学科の長尾と言います。以後宜しく」
「同じく松原です」
「松本です。そちらの沢谷さんとは一般教養の演劇A班で一緒だったよね」
「そうそう松本君が謎の老人役で私が演出で」
そんな感じで女子も含めて自己紹介をする。
ちなみに女子Aが浜原さん、女子Bが沢谷さんだそうだ。
「ところでこんな感じなら明日もこうやって撃退体制作った方がいいかな」
「そうだよね、それじゃ明日も宜しく」
影で松尾がガッツポーズしているのはお約束だ。
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