その4 集団護衛体制……という名目の合コン的昼食

 そんな訳で二限の授業が終わる。

 既に亜理寿さんの居る場所は把握済みだ。

「悪い、今日はちょっと所用で」

 そう言って出ようとしたところで

「何だ、何の用だ?」

 長尾に捕まった。


「彼女がストーカーに絡まれているって聞いたから、昼休みは一緒にいようって」

「津々井の彼女って薬学部のあの美人さんか。大変だよな、美人なのも」

 松原はそう言って頷く。

「よし、津々井を応援してやろう」

 長尾が立ち上がった。


「応援ってどういう意味だ?」

「一緒に行ってストーカーをガードしてやる」

 おいおい、ストーカーを増やしてどうする。

「あ、でも確かにいい案かもな」

 松本、お前まで!

「いやな、津々井一人だと押しが弱いから、こっちも集団護衛体制で」

「その本音は?」

「他人の彼女でも女っ気ある方が飯がうまい」

 そっちですかい!


『ごめん、こっち友達数人連れて行くけれど大丈夫か?』

 繋がるかどうかわからないけれど魔法音声の時と同じようにそう考えてみる。

『構いません。むしろ多い方が助かります』

 通じたようだ。

 色々と雰囲気台無しのような気がする。

 でもまあ本当は恋人とかそういう関係じゃ無いし、実利的にはこれでいいか。

 そんな訳で松本、松原、長尾という面子を引き連れて薬学部方向へ。

 

 通称『緑の広場』を横切って厚生棟と薬学部の中間地点に亜理寿さん達がいた。

 達、とついたのは向こうも四人だったから。

 亜理寿さんと美璃香さんはわかるがあと二人は知らない女子だ。

「すみません、色々とご迷惑を」

 亜理寿さんがそう言っている横で美璃香さんがにやりと嗤う。

「そっちも考えることは同じか」


「取り敢えずストーカー対策という事で」

 松本はそう言うけれど、

「女の子が一緒にいた方が飯がうまい」

 長尾、それここで正直に言うか!

「合コンじゃ無いんだから」

 松原、その台詞も微妙にまずいぞ。


「まあ今日は皆で二人を囲ってお互いを観察しましょ。合コン的OKが出たら次のステップという事で」

 美璃香さん、肉食系な発言ありがとうございます。

「食堂はどこにする? 第一第二第三?」

「合コンだったら第三だね」

 ショートボブの量産型大学生風の女子Aがそんな事を言う。

 なかなかノリがよろしい性格のようだ。


 そんな訳で全員で滅多に行かない第三食堂へ。

 ここは最低の定食でも五百円超えという、ここの学食としては高級な食堂だ。

 取り敢えず僕と亜理寿さんが中央で隣り合わせ。

 他が俺達を囲むような形でテーブルセット。

 何だかなと思いつつも昼食開始となる。


「ところでそのストーカって、どんな人?」

 長尾が軽い感じでそう尋ねる。

「多分もうすぐ出てくるよ。いつも行く先々で張っていて、お待たせという感じで出てくるから」

「いつもは第二食堂だから、多分そっちに行っていると思います」

 美璃香さんと、ちょっと大柄だけれど割と美人系な女の子Bが教えてくれた。


「そう言えば津々井の彼女さん以外は彼氏とか無し?」

 長尾が下心見え見えの質問をする。

「薬学部は男子少なくて出会い無いから。サークルとかでくっついている人もいるけれど、彼氏無しが多いよね」

「そうそう」

 女子AとBによれば一般的に彼氏はまだ多くない模様。


「やっぱり医学部狙いが多いんですか?」

 松本がとんでもない質問をする。

「うーん、医学部は研修とか含めると十年くらいは大学にいるしね。それじゃ四年くらいは私達の稼ぎで何とかしなければならないじゃない。そう考えるとここで付き合うのはリスクが高いかな」

「家が金持ちが多いから、その辺はメリットだけれどね」

 身も蓋もない話、連発。

 そして長尾、影でガッツポーズするんじゃない!

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