その3 魔法使いのストーカー
真理枝さんを後に乗せて車で学校を離れた後。
亜理寿さんはやっと何が起こっていたかを教えてくれた。
「ストーカー、しかも相手は魔法使いか」
真理枝さんがそう言ってため息をつく。
「こっちにその気は無いと言っても全然聞かないんです。君にふさわしいのは僕に違いない、何故それを認めないんだって。
同じ薬学科ですから授業もほとんど一緒ですし、困りました」
「この季節はそういうのが沸きやすいんだよね。三次の時もそうだったし。クリスマスの前に彼氏彼女を作ろうとするんだよね。付け焼き刃でくっついても碌な事になならないのに」
ふと長尾の事を思い出す。
ああいうのが増えている訳か。
「三次先輩の時ってどういう状況ですか」
参考までに聞いてみる。
「三次が
うわあ、百合の香り! じゃなかった。
でも確かに摩耶さんがやると似合うよなきっと。
「それ以来
「流石にそれは申し訳ありません」
「だよね。摩耶さんが百合のハーレム築きそうだし」
百合のハーレムって結構なパワーワードだな。
つい運転しながらそんな事を思ってしまう。
「でも亜理寿ちゃんには文明がいるでしょ。そう言って断らなかったの?」
おい! 急にドキッとしてしまった。
ちょうど直線区間だったので運転に影響させないで済んだけれど。
「勿論そう言いました」
亜理寿さんは当然のことのようにそう言いきる。
おい待て落ち着け僕、これは亜理寿さんの男除けの呪文みたいなものだ。
実際に彼氏・彼女の関係ではなくあくまで便宜上のもの。
文化祭の時もそうだったじゃないか。
「でも、そんな普通の人間より魔法使いである俺の方が相手にふさわしい。それは自明だろうって言う事を聞かないんです。今日の五限目は口羽君は授業を取っていないし、念の為文明さんに隣の席に座ってもらったのですけれど、明日が憂鬱です」
相手は口羽って言うのか。
そうでなくても亜理寿さんは他人が苦手なのに困ったものだ。
何とかしてやりたいけれど、どうしようか。
「取り敢えず昼休みとかは文明を張り付けておくのが一番かな。でも授業が同じなんだよね」
「美璃香さん達が一応ガードしてくれるのですけれどね。確かに昼休みは文明さんがいてくれると助かります」
何か色々面倒な奴のようだ。
「なら明日の昼休みからは第二食堂で待っていようか」
「出来れば二限の授業が終わったら薬学部の方へ歩いてきてくれませんか。場所は魔法音声で言いますから」
「わかった」
それで少しでも亜理寿さんが安心出来るなら安いものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます