第六章 冬はつとめて
第23話 魔法使いのストーカー
その1 冬の足音
大分寒くなってきた。
時々雪が降っていたりもする。
まだそれほど積もるという事は無いけれど、もう自転車通学は無理だ。
時々道が凍っていたりするし何より寒すぎる。
そんな訳で平日は僕の車に三人乗りで通学している。
あと、家が古くて広いので必然的に寒い。
一応リビングと真理枝さんの部屋、僕の部屋には温風ヒーターがある。
亜理寿さんは魔法で室温を自動調整出来るのでストーブはいらないそうだ。
ストーブが無いトイレとか廊下とかは劇的に寒い。
さすが東北だけのことはある。
「私も来年には免許を取った方がいいですね。それとも冬休みか春休みに合宿免許で一気に取った方がいいでしょうか」
「私は一応免許を持っているけれどAT限定だし、本当お情けで合格したからもう運転出来る自信無い。文明の車はマニュアルだからどっちにしろ運転出来ないけれど」
そんな感じで平日はつい三人一緒に行動することが多くなる。
登校下校お買い物までずっと一緒だ。
バイクレース場とビオトープはとにかく寒すぎて作業中止。
畑は人参と葉物を必要な際に収穫するだけという状況。
それでも休日に時々サバゲはやっていたりする。
あとは枝払いとか薪集めなんてのも冬場がシーズンだ。
でも一番多い休日の過ごし方は、カードゲームやボードゲーム、そして露天風呂。
外は極寒で吹雪いていても若干ぬるめの露天風呂にぼーっと浸かるとそれだけで結構気分がよかったりするのだ。
もっとも週末の露天風呂は基本的に女性陣に占拠されている。
土曜日十五時から十七時だけは男性専用時間で、建築班とか男性亜人とか某教授とかが入っていたりするけれど。
そんな訳で冬に入って一段と温泉旅館みたいになってきた我が家だ。
何せ一部の方に至っては露天風呂と部屋を行き来しやすいよう、バスローブとか浴衣もどきを自前で用意して着ていたりもする。
そんな方が朝方部屋とかリビングでとんでもない格好で行き倒れていたりする。
皆さん寒さに強いのか週末は魔法エアコン完備になっているからなのか、風邪をひいたりはしない。
でも見た目にとってもまずいので何とかして欲しかったりする。
口に出しては言えないけれど。
さて、そんな感じで冬を迎え、そろそろ冬休みを気にし始める季節になってきた。
医理大の今年の冬休みは十二月二十六日から一月五日まで。
本当は一月三日までなのだが四日が土曜日、五日が日曜日。
なのでその分今年は冬休みが長い。
そうは言っても二週間も無いので僕自身は実家には帰らない予定だ。
さて、そんなある火曜日昼の第二食堂で、僕は長尾から質問を受けた。
「十二月と言えば最大のイベントはクリスマスだよな。そこで津々井は亜理寿ちゃんにどんなプレゼントを用意するんだ? 参考までに教えろ」
「そう言えばそんなイベントもあったな」
僕自身はそんな事は全く考えていなかった。
「甘い! 年の最大のイベントと言えばクリスマスとバレンタインデーだろ!」
「粉砕デモか?」
松本がしょうもない事を言う。
「そう、今こそリア充爆発しろ呪ってやるの理念を胸に……って、違うわい! 今年こそはクリスマスまでに彼女を作ってリア充になるのだ! クリぼっちからサヨナラで性なる六時間をムフフで過ごすのだ!」
「でも長尾、お前相手いないだろ」
松原が身も蓋もないツッコミを入れる。
「まだだ、まだ終わらんよ。諦めたらそこで試合終了なんだ! 津々井の家で目撃したようにこの大学にも女子は確実に生息している。それに女子だってクリぼっちは嫌な筈だろ。需要と供給が少しでも近づく今こそ、勝利を我が手にという訳だ。
そんな訳で参考までにこの中で唯一のリア充にプレゼントの事を聞いてみた訳だ」
「でも何も考えていないな」
何せ本当は彼女では無いから。
「甘い、それでは亜理寿ちゃんが誰かに取られるぞ」
いや彼女じゃないからさ、とは言えない。
「何か適当に考えておくよ」
でも何となく気になって長尾に聞いてみる。
「参考までにクリスマスプレゼントの定番って何だ?」
「ネックレスか腕時計だな。指輪だと彼女相手というには重くなるしさ」
「長尾はその前に彼女を捕まえないとな」
「犯罪に走るか異世界に走るか二次元に走るか、選択の時だな」
「だから何故そんな結論になるんだ!」
いつもの大した意味は無い時間潰しの会話。
でも何となくプレゼントの事は頭の中に残った。
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