その13 それぞれの思惑

 結局昼と同じ面子で夕食まで食べた上で、長尾達三人は車で帰っていった。

 なお明日は日曜日なので今日来た女子の皆さんは泊まっていくそうだ。

 長尾はとっても帰りたく無さそうだったがまあそこは仕方ない。


 さて、男性陣が帰った後はいつもの宴会モードに突入。

 露天風呂へ入ったり、ボードゲームが始まったりという感じだ。

 ついでなので僕もラミイキューブに参戦。

 それにしても見るたびに新しいゲームが増えているような気がするけれど、気のせいだろうか。

 まあラミイキューブそのものは昔からあるゲームらしいけれど。


 ただここでやっているラミイキューブは『理系ルール』だ。

 ラミイキューブは普通は同じ色で連続した数字か、同じ数字で別の色のものを出すことが出来る。

 でも『理系ルール』は、『同じ色で連続した数字』と同様に『同じ色でメジャーな数字の並び三つ以上』も連続で出せるルールになる。

 例えば『31415』の円周率とか『173205』のルート3とかも有りだ。

 『11235』もフィボナッチ数列でOKだったりする。


 そんな妙なルールのラミイキューブで結構燃えた後、燃え尽きてちょっと部屋の隅で休憩していた時、同様に休憩中の美智流先輩と目があった。

 ちょうど聞いてみたい事があったので話してみる。

「美智流先輩、今日、僕のクラスメイトが来た時、皆でここ全体を案内するっているのは誰が決めたのでしょうか」


「誰がというときっと抜田君でしょうね。金子ネコさんや深川さん、アンドレアさんを呼んだのは私と真理枝さんですけれど。ただ抜田君自身はひょっとしたら私を含む四人は呼ばない方がいいと思っていたかもしれません。その辺は私も正解がわからないです」


「どういう事ですか?」

 思ったのとかなり違う答えが出てきてちょっと頭が混乱する。

 僕の予想した答は、美智流先輩と真理枝さんの二人で相談して決めたというところまでだったのだ。

 でも今の答えはその先、この事態を仕組んだ理由まで含めた話になっている。

 

「抜田君の狙いは、きっと学園祭の時にここに男子亜人を二人ずつ呼んだ事と同じだと思うのです。ここに男子がいても問題ないという状態にしようという考え。または問題無いと気づいて貰おうという考え。でもそれが何の為にかというと、色々な答があると思うのです。何が本当の目的か、私もはっきりとはわかりません」


「単なる悪戯というのとは違いますよね、きっと」

「ええ」

 美智流先輩は頷く。

「多分抜田君は抜田君なりのヴィジョンをもって、そして彼なりに良かれと思ってやっていると思うのです。それこそ初夏のパンティ泥棒の件とかも含めて。あの人は狸ですけれど私以上に神に近い能力をもっていますから」


「美智流先輩が抜田先輩の事をそう言うというのは意外ですね」

 もっと仲が悪いかと思っていた。

 でもそう言えば深川先輩が思わせぶりな事を前に言っていたような気もする。


「本音で言えば、あの人は私にとって色々難しい存在です。私以上の力の持ち主で、それでいて自由気ままで何事にも囚われない。

 神に近い力があると大体の事柄は発生と同時に結果が見えてしまうのです。そういう意味で世界は乱数要素が少ない決まり切ったものに見えてしまいがちになります。若干のバタフライ効果エフェクトも無い訳ではありませんが、大体は予測の範囲内に全てがおさまってしまいます。決定論的な宇宙観と言うべきでしょうか。少なくとも私はこの大学の三年になるまで世界をそう感じていたんです」

 何かちょっと違う話になってきた。


「自分の自由意志というものですら、本当に自由なのか疑っているくらいの状態です。結果が見えているのにわざわざ悪い方へ物事を変更したりはしないですよね。その辺は祥子や有紀も同じ感覚だって言っていました。抜田君が来るまでは、ですね」

 祥子さんや有紀さんって……あ、悪狸討伐会の皆さんか。

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