その7 沢から尾根道方向
沢に入ってからは所々でキノコ採取になる。
ただあちこちにあるのだけれど、僕らの目ではわからない。
「そこの落ち葉の下、わかりますか。少し盛り上がっている処です」
そう言われてもわからないのだが、落ち葉をめくると白っぽい傘が大きく柄が細いキノコが十くらい生えていた。
「ナメツムタケです。これもナメコと同じように食べます」
他に倒木の裏に生えていたりもする。
「ムキタケですね。これも食用です」
そんな訳でそれっぽい倒木とか枝とか落ち葉溜りがあると、つい先行して確認してしまう。
僕だけでなく金子先輩以外皆がそんな感じだ。
金子先輩だけは何故か何処に何があるかわかっている感じだけれど。
「先週まではもっと色々生えていたのですけれどね。マイタケもあったのですけれどもうその辺のキノコはシーズン終わりみたいです」
確かに学園祭の後に気温がまた一段下がったから、そのせいかもしれない。
「この白いのは何ですか」
「ブナハリタケです。食べられますね」
「これは?」
「残念! ツキヨタケです」
そんな感じでうろうろしながら歩いて、滝壺に出た。
「結構大きい滝ですね」
以前にも来た事があるが高さ十メートル位のかなり高い滝だ。
天気のいい日が続いているがそこそこの水量はある。
「こんなのがあっさりあるんだな」
「夏なら涼しくて楽しそうだ」
そして深川先輩がまたしても投網を取り出して構えた。
「見た通りここはヤマメがいるのだ。とりあえず味見用に捕ってみるのだ」
すぱっと滝壺の半分位まで広がる感じに網を投げる。
「よし、入ったのだ」
網に何かしら入って動いているのが見えた。
いい感じの大きさのヤマメが二匹だ。
「今年はこれくらいにしておくのだ。また来年捕るのだ」
「こんな小さな淵だと捕ったらいなくなったりしませんか」
「岩の下とかに案外いるものなのだ。中に入って徹底的に追い詰めても、そう簡単に根絶やしはできないのだ」
これもやはりクーラーボックスへ。
「さて、ここから沢沿いは無理ですので作業道で上ります」
少し上ると小さい広場があり、上下に幅一メートル位の道が続いていた。
GW頃に作った道より大分しっかりした感じになっている。
「ずいぶんしっかりした道を作ったんですね」
「バイク組がこの滝へ遊びに来る時用の道だそうです。この広場が駐輪場、下はため池横の護岸部分まで、上は尾根道まで続いています。これのおかげで歩きでも大分楽になりましたね。倒木もある程度のものならトラクタで入れますし」
いつの間にかそこまで開発していたようだ。
「バイクって?」
「稲城なんかがいるバイクのツーリングクラブ。あそこで時々この山を走る会とか下のサーキットで遊ぶ会とかをやっている」
「そう言えばここの事は最初は稲城に聞いたんだった」
「イライザ先輩とアンドレア先輩がここの常連でさ。結構開発作業をしていたりするんだ。専用バイクも二台持ち込んでいる」
「それも楽しそうだな」
「走るだけなら今日出来るぞ。他にバイクを使っていなかったらだけれども」
「おっ、いいなそれ」
そういいながら歩いて行く。
道に被さる枝があったので一時停止。
「邪魔だしこの枝切って行くぞ」
背負い籠からノコギリを取り出す。
「そう言えば薪集めなんてのもあったな」
「そういう事。朽ちていない倒木とかこういう枝とかを使う訳だ」
「でもまさか今時ご飯を薪で焚いていたりはしないだろ」
「そのうちわかるさ。さあ作業作業」
ノコギリは二本あるので、枝を落とした後は二人でそれぞれ手頃な長さに切る。
「結構面倒だな、これ」
「チェンソーもあるけれど重いから今日は持ってきていない」
「おい、なんとか切れた。次交代!」
そんな感じで所々の枝を切りながら尾根道方向へ、そしてその先へ。
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