第22話 我が家見学会
その1 査問会の開催
まず、学園祭のうどん屋は非常に上手く行った。
毎回売れ切れ終了だから当たり前だけれども。
学園祭開始の土曜日から終了の次々週日曜日までの八日間で売り上げは三十三万三千五百円。
仕入れに使った金額が合計八万二千七百円ちょい。
結果、二十五万円ちょいの儲けだ。
使い道は現在、金子先輩を中心に考慮中。
さてそれはともかくとしてだ。
現在僕はピンチを迎えている。
火曜日二限は情報科学科一年の必須専門授業。
その授業開始前に長尾が宣言したのだ。
「授業が終わったら昼食食べながら津々井の査問会な」
おいおい何だよ査問会って。
そう言いたいのだが皆さん目が冷たい。
まあ何についてかはわかっている。
亜理寿さんの件だろう。
どう弁明するか考えつかないうちにチャイムが鳴る。
情報処理教室は飲食禁止。
だから第二食堂に舞台を移して査問会開始だ。
逃げてもいいのだが後が面倒。
だからここでケリをつけたいが、どんな感じになるだろう。
全員が納豆定食(自称)や卵かけご飯定食(自称)等の貧乏定食をとって窓近くの八人掛けテーブルに陣取ったところで、査問会は始まった。
「さて、今回の件はもちろん津々井が彼女を隠していた件についてだ。皆の忌憚の無い意見をここで存分に津々井に聞かせてやろう」
「まさか津々井が彼女持ちだとは思わなかったのである。しかも美人だったのである。高校時代からの知り合いと聞いたのである。羨ましいのである」
「ついに津々井も田舎大学名物3Sの最難関をクリアした訳だ。取り敢えず謝罪と賠償をだな」
ちなみに3Sとは、スポーツ、ステディ、セックスである。
田舎なのでそれしかやる事が無いという自嘲的な隠語だ。
「おいおい、彼女はいるけれどまだ清い状態だぞ。それに彼女と言っても実際は友達程度の付き合いで、それ以上のことはまだだ。それに謝罪はわかるが賠償というのは何だよ」
「賠償とは当然友達の女の子を紹介してくれという事であーる。それに稲城達からとんでもない情報を聞いているのである」
「おい長尾、今日は喋り方がいつもと違うぞ!」
いつもはもっと普通の話し方をするのだ。
こんなドクロベエみたいな話し方はしない。
「怒りの糾弾なのである。実は津々井の罪は単に彼女がいるだけでは無いのであーる。複数女性と同棲しているのであーる」
「何だって!」
おい待った! それってつまり……
「証拠その一、クラス名簿なのである。これで津々井の現住所がわかるのである」
こっちまでバレていたか、と絶望感に一瞬襲われる。
でもまだだ、まだ決定では無い。
「証拠その二、クラス名簿での津々井の住所をゼン●ン住宅地図で調べてコピーしたものである。これにはコピー代二十円がかかったのであーる」
まめだな、お前。
「証拠その三、稲城から聞いた『女子だけのサバゲサークル、ガーリィアニマルズ』の自前サバゲ場への地図である。ここの地主の家は以前に『女の子だけ三人で住んでいる家で、チームガーリィアニマルズの拠点』と聞いたのである。これと津々井の家の場所が一致しているのである」
おお! という声があがる。
まずい、ここまで知られていたか。
「更に証拠その四、同じく稲城の持っていた『バイクで走れる山』の地図なのである。この家とサバゲ場を持っている家は同じなのである。ついでにこっちもやっぱり『女の子だけで住んでいる家』と聞いたのである」
「良く調べたな、そこまで」
ほほう、という顔で松本と松原が証拠資料を見ている。
「稲城が言っていたのである。学園祭最終日、津々井が連れて歩いていた彼女って、あの女の子だけの家の住民だったような気がすると。つまり津々井は自分以外女の子だらけの家に住んでいて、何人もと同棲しているのであーる!」
おいちょっと待った!
「確かにうちの家は広いから二人程部屋を貸しているけれど、同棲はしていない。あくまで部屋を貸しているだけ!」
「前に『女の子だけの家』の事を聞いたとき『知らない』と言ったよな」
「話が大きくなると面倒だからだ。それ以上じゃ無い!」
「女の子三人と聞いたけれど一人減っているのである」
「一人は従姉妹だ。元々はこっちに住んでいたから僕の引っ越しと一緒に引っ越したの!」
「確かに一人は中学生くらいと聞いたな」
「だいたい彼女とナニするなら他の人に部屋貸さないだろ、従姉妹もいるしさ。単に家が広すぎるから高校時代からの知り合いに部屋を貸して、それでも余ったからもう一部屋貸しただけ!」
「甘いのである。三人とも津々井の毒牙にかかっている可能性があるのである」
「そんなエロマンガ展開無いって!」
「でもその家、ガーリィアニマルズの拠点で週末は女の子だけで集まっていると聞いたぞ。まさかそこで入れ食い状態で……」
「むむむ、羨ましいけれど体力が続くか心配でござる」
「そんなエロゲ展開無いから、実際」
確かに変身後の全裸獣人女子が倒れていたりもするが、それは見て見ないふりをする方向で処理している。
いちいち気にしていたらやっていられない。
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