その14 学園祭の終わり
二日目以降、亜人男子二人が交代で手伝いに来て家にも来て、建築班も夜合流して風呂入って宴会して帰るという感じが続く。
あとは午前中の時間で演劇も亜理寿さんと見に行った。
先輩の皆さんお勧めの甘味処だとか漫研とか文芸部あたりにも。
一人で回った方が気楽じゃ無いかと亜理寿さんに聞いたところ、
「文明さんと一緒なら少なくとも座席の隣の片側は安心出来ますから。それに一緒の方が声をかけられにくいですし」
という理由で結局全部一緒に回った。
ただクラスの連中にあちこちで見つかってしまったので、授業再開後が大変になりそうだ。
まあどう見てもデートだけれどさ、実際。
僕としてはこれでも距離感をある程度保つように苦労していたりするのだ。
亜理寿さんの事が嫌いとかそういう訳じゃ無い。
むしろ好きだし、一緒にいた方が色々感想を言い合ったり出来て楽しい。
でも亜理寿さんが僕と一緒にいるのは他の人が苦手だからという理由だ。
それなのに彼女扱いをするとかはやっぱりまずいし、亜理寿さんに対してもフェアじゃないと思うのだ。
もし恋人扱いするなら、せめて亜理寿さんが他の人を大丈夫になって、色々な相手を公平に見ることが出来るようになった上で、選んで貰うべきだと思う。
まあそうなったら何の取り柄もない僕を選んでくれる可能性は低いけれどさ。
それはそれ、これはこれという訳で。
さて、本日は学園祭最終日の日曜日。
うどん屋も現時点で無事売れ切れ終了した。
ガス台とかクーラーボックス、水タンク等を取り外して屋台はもう終了状態。
ここから先は建築班が部品を取りつつ解体するというので、学校外れの建築班の資材置き場に持って行く。
看板等は来年も資材で使うというので同じく資材置き場へ。
鍋とか什器類はそれぞれ車に積んで片付け終了だ。
「さて、これからどうしますか」
「私は家に帰って寝るよ。ちょっと疲れた」
真理枝さん達は昨日夜開催されたオールナイトフェスティバルなんてのに出てお疲れ気味。
「露天風呂直行の連中は私が送って行こう。真理枝以外にもお疲れ気味が多そうだからな」
摩耶さんが露天風呂組を車で送ってくれる模様。
「こっちはどうする?」
「最後だし、もう一度学園祭を回ってみましょうか」
そんな訳でもう一度模擬店をぐるっと回る。
最終日という事で結構模擬店の中には焦りが見えているところもある。
材料が余っているのか、割引値段のところまで。
「どうせだから安いの適当に買っていくか。皆さん小腹も空くだろうし」
「そうですね。でもお小遣い、大丈夫ですか?」
「普段使わないから結構大丈夫かな」
「そうですね。私も本代くらいしか使う事も無いですし」
そんな訳で安くてある程度時間をおいても大丈夫なものを中心に品定め。
サーターアンダギーとか大判焼きとかふらふら買い物。
そうしたらまたもや知り合いに出会ってしまった。
「津々井、ちょうど良かった。頼むからホットドッグ買ってくれ」
同じクラスの稲城だ。
「どうした、売れ残りか」
「あと残り六本なんだ。ダブルだと三本。パンはともかくソーセージが結構原価高いからさ、何としてでも売り切りたい」
「値段次第だな」
「大負けにまけてシングル六本で千円!」
「そんなに負けてないがまあいいか」
結構必死っぽいので仕方無く買ってやる。
まあ知り合いの屋台はここと建築クラブのピザ屋くらいしか無いしな。
ピザ屋の方は予約販売が追いつかない位の状況だし。
「助かった。食べていくか持ち帰りか」
「持ち帰りで。流石に一気に六本は無理だ」
「まあそうだな。包んでくるから待っていてくれ」
店を見てみるとイライザ先輩とかアンドレア先輩とかはいない。
稲城ともう一人でやっているようだ。
「ほかのツーリングクラブの皆さんは?」
「大体が昨日のオールナイトフェスティバル参加で今日は倒れているよ。今日はジャンケンで負けた一年二人で店番」
「何か悲惨だな。どれ、この大判焼きを二個ほど進呈しよう」
「サンクス。自分とこの余りのパンしか食べて無くてさ」
「なんでまた」
「夏にテントとか色々買って金が無い」
「なるほど」
アンドレア先輩達もバイクにテント積んでツーリングに行っていたらしいしな。
一年だと装備を揃えるにも色々物入りだろう。
「ほい、ありがとう。ところで一緒にいるの、津々井の彼女さん?」
「どうも初めまして。薬学部一年の城間といいます」
しれっと亜理寿さんが挨拶する。
「こちらこそ初めまして。まさか津々井にこんな綺麗な彼女さんがいるとは。長尾とかが言っていたの本当だったんだな」
えっ。
「おい奴らそんな事言っていたのかよ」
「一昨日そんな事言っていたぞ。でも彼女さん、どこかでお会いしませんでしたか」
「ここの薬学部ですから。一般教養等でお会いしているかもしれませんね」
「そうですね。でも何処か別の場所で会ったような……何処だっけ」
あ、まずいかも。
稲城はツーリングクラブだから家で亜理寿さんを見かけている可能性がある。
「ま、それはともかくホットドッグは頂いていくぞ。ほれお代」
「サンクス。でも何処だったっけかなあ」
まだ稲城は考えている様子。
思い出す前に引き上げるとしよう。
「じゃあまたな」
僕は稲城が思い出す前に逃げることにした。
「火曜日にな」
明日月曜は学園祭の片付けでお休み、授業は火曜日からだ。
「結構買い込んだし、そろそろ家に戻ろうか」
「そうですね」
僕と亜理寿さんは車を停めている学生駐車場の方へ歩き出した。
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