その11 男性亜人送り込み?
うどんは男性亜人の皆さんにもなかなか好評の模様。
「美味しいねこれ。誰が作っているのかな」
「基本的には
塚原先輩と美智流先輩のやりとりに、抜田先輩がにやりと笑って口を開く。
「まあ今日は塚原さんと長谷で状況探ってくればいい。どうせまた午後からはキノコ採りとかうどんの仕込みとかするんだろ。一緒にやってみればいい」
「いいんですか?」
こう聞いたのは長谷先輩。事前打ち合わせは無かった模様だ。
でも抜田先輩はしれっとした顔で美智流先輩に振る。
「塚原さんがいれば大丈夫だろ、なあ美智流さん」
「まあそうですね」
美智流先輩が苦笑する。
「抜田君よりよっぽど安全です」
「だから僕は予告無しでの悪戯はしないって」
「またやったのか、抜田」
「今年はまだ初夏に一回だけです」
塚原先輩の突っ込みにそう応えて苦笑する抜田先輩。
「でも僕や長谷君が一緒に行って迷惑じゃないかい」
塚原先輩は抜田先輩と違って慎重な模様。
でも深川先輩が大丈夫という感じに大きく頷いて口を開く。
「全然問題無いのだ。長谷も能力を抑えられるようになったのがわかるのだ。万が一でも塚原先輩がいれば問題無いのだ」
「そうそう。今日の外回り、キノコ山菜採りに連れて行ってもらえばいい。塚原さんと長谷なら誰も採取出来ない場所でも余裕だろ」
「それは助かりますね。採りやすい処だけ採ってては無くなりそうな勢いですし」
そんな事を話しながらうどんを食べていく。
「それにしてもこれは美味い。うどんも美味しいけれどキノコもいい」
「本当の意味の産地直売ですしね。古くても昨日午後採ったものです」
「でもこんなに出して大丈夫か。特にマイタケ」
「巨大サイズが採れそうな場所がまだ十箇所以上残っているから大丈夫ですね」
「恵まれているな」
この辺は太田先輩と金子先輩だ。
そんな事を話しているうちに全員のうどんが空になった。
「それじゃ塚原先輩と長谷は置いていく。午前午後とこき使ってやってくれ」
「あれ、店番は午後からの予定ですよね」
「今日の売れ切れ閉店は十二時ちょうどの予定だ。そうですよね、塚原さん」
「うん、そんなところかな」
「じゃ二人を宜しく。こっちは今日は失礼するから」
抜田先輩と太田先輩、粟屋先輩はそう言って立ち去っていった。
そして塚原先輩と長谷先輩が残される。
「それじゃ何を手伝いましょうか」
塚原先輩が立ち上がって深川先輩に尋ねた。
「今はまだ大丈夫なのだ。十時半の客の後にお願いするのだ」
「塚原さんも長谷君もこっちに座って。椅子はいっぱいあるから」
そんな訳で二人はうどん屋裏の亜人たむろスペースへ。
「それにしても悪いね。強引にお邪魔した感じで」
「いえいえ。それにどうせ抜田君が勝手に決めたんでしょう。ここに来る話」
「まあそうだけれどね。ただ今年は何かいつもと違う活動をやっているそうで、一度見てみたいとは思っていたんだ。お邪魔じゃなければの話だけれど」
「全然問題無いですよ。家主も問題無いよね」
真理枝さんが僕に振ってきた。
「実際の家主は僕というより美鈴さんのような気がしますけれどね」
実質家のことを取り仕切っているのは美鈴さんだからな。
「美鈴さんって?」
塚原先輩はそこまでは知らないようだ。
「うちの座敷童です」
「料理上手だしキノコや山菜にも詳しいし洗濯とかもしれくれるんだよ」
「それで真理枝がぐーたらになってて」
「確かに否定出来ないけれどね」
「そう言えば男性の方は集まりとか何かあるんですか」
この際なので聞いてみる。
「特に何もないね。人数が少ないし学年も学科もバラバラだしさ。多少は学校なんかの情報でメールのやりとりはあるけれどそれだけだよ。
今回は抜田がメール回して久しぶりに集まった感じかな。抜田くらいしかそういう事をする奴がいないしね」
「俺も半年前に塚原先輩に世話になって以来です、他の亜人と会うのは」
これは長谷先輩だ。
「前に迷惑かけたし、あまり人前に出る気は無かったから」
「あれは長谷のせいでは無いのだ。調子に乗った連中が悪いのだ」
深川先輩がそんな事を言うけれど、何かあったのかな。
そう言えば確か長谷先輩も前は危険人物側に入っていたような気がするけれど。
何か事案があったのだろうか。
種族もインキュバスだし、確かに能力的には危険そうだけれども。
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