その7 解散、そして
大きな山は三回ほどあった。
建築クラブの後の十四人分、十一時過ぎの十五人分、十二時寸前の二十人分だ。
結果的に三回目の山でうどんが売り切れた。
天ぷらも種類が減ったので最後少しサービスしたら全部無くなった。
仕方ないので用意した売切看板看板を表に立てる。
『売れ切れました。申し訳ありません。明日も朝九時半から営業します』の文字の横で二頭身のネコが頭を下げているものだ。
なお二頭身のネコの尻尾が二股になっている事に何人の人が気づくだろうか。
ネコの顔もよく見たら金子先輩に似せてあったりする。
「しまったなあ。まさかこんなに早く売れ切れるとは思わなかった」
「予測していた人もいるみたいよ」
微妙に怒り顔で真理枝さんがスマホを皆に見せる。
『どうせ僕の番は回ってこないと思うから今日は失礼する。明日は今日の倍は用意しておくことだな。秋良』
タイムスタンプは朝十時過ぎ。
すでにこの事態を抜田先輩は予測していたわけか。
いやあの人の場合は予知の可能性もある。
「どうせなら先にこっちに教えてくれればいいのに」
「いえ、私の完敗です。ここまで早く売れ切れになるとは予知できませんでした」
美智流先輩もそんな事を言っている。
「どうする。ここで食べるつもりだったからお腹が空いたんだけれど」
「家に撤収ですね。皆のお昼と明日の仕込みをしておかないと」
「そうですね。でもついでだから他の模擬店でも色々買って持ち帰りましょう]
「鍋とかはどうする? 今は混んでいるから屋台ごと引っ張っていくのは大変だよ」
「ここで水やお湯を捨てて、車までもっていくしかないですね。摩耶さんと亜理寿さんにお願いして、車に大物が乗ったら屋台だけここに置いて撤収しましょう」
「なら先に車の方へ行っている」
「私もそうします」
「なら亜理寿さん、これ鍵」
「ありがとうございます」
「あ、亜理寿。その前にこの鍋冷やしておいてくれ」
「わかりました」
熱いものは触れる程度まで冷やしてもらって片づけ開始。
鍋のお湯を捨てたり什器をまとめたりごみ袋を捨てにいったり。
ほぼ十分程度でそれぞれ片づけ終わった。
「それでは向こうへ行く人はそれぞれ自分の足を確保しておくように。摩耶の車はまだ乗れるよな」
「もともとが八人乗りだからな。後席をフラットにして詰め込めばもう少し入る」
「便利だよな、大きくて」
「ディーゼルで少々うるさいけれどな。向こう集合は一時半でいいな」
「そうですね。一人五百円くらいずつ色々買って持ち込みましょう」
「楽しいよね、それも」
そんな訳でまず僕は車の方へ。
亜理寿さんが荷室にクーラーボックスや小鍋を積んで待っていた。
僕の車は小さいので荷物を積めば二人乗り。
つまり亜理寿さんだけしか載せられない状態だ。
まあそれは皆知っているので、他の皆さんは美智流先輩や金子先輩、そして摩耶先輩の車で来ることになっている。
「家での集合は一時半だって。それまでに五百円位ずつ模擬店で買ってみんなで集まろうって」
「面白いですね、それも」
「せっかくのお祭りだしさ。美鈴さんがいつも作らないようなものを探して買っていこう」
「そうですね、じゃあ一緒に行きましょうか」
クラスメイトに見つかるとまずいかなとちょっと思ったが気にしないことにする。
どうせ今日もまだ稲城にしか会っていないくらいだし大丈夫だろう。
「どの辺から回る?」
「まずは正門側から一通り回ってみましょう」
結構ご機嫌だな、亜理寿さん。
「OK」
そんなわけで僕は亜理寿さんと一緒に正門側へ向かって歩き始めた。
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