その3 謎の解決方法
「ネックはゆで時間なんです」
金子先輩はそう言いながら生地を製麺機で伸ばしている。
「いつも作る讃岐風は生麺でも茹で時間が十分弱かかります。その間お客様をお待たせするのは正直なところ大変ですし難しいと思います。ですから茹で時間が少なくてすむ細麺が適しているのですが、細麺で有名なうどんは手間や作り方が少し違うので、あまり自信が無いんです」
なるほど。
そんな事を言いながらも伸ばしたり切ったりして三種類のうどんが出来た。
「取り敢えず細かい工夫をしないで太さだけを変えたうどんです。これを茹でて味見をしてみます」
煮立ったお湯が入っている大鍋に、まずは太麺から入れていく。
時間差で中太、細麺と入れて、しばらくした後に細麺、中太、太麺とそれぞれ出して水洗いして丼に入れる。
つゆは今回は市販のつゆだ。
当日の気温も考えて熱いかけうどんで試食。
なお試食しているのは真理枝さん、稲森先輩、亜理寿さん、朱里さん、美鈴さん、僕の六人だ。
なお間接キスとかそういう意見も出そうだが無視。
ここで半年もやっているとそんな事を気にしなくなってくる。
まあ僕は時々気になったりもするけれど。
「細いのも美味しいじゃない」
「うん、これでも美味しいよね」
「私も美味しいと思います」
「同意かな。市販の冷凍うどんとかと比べても全然こっちが美味しい」
僕も同意見だ。
「次は中太です」
これも皆で食べてみる。
あ、確かにちょっとだけこっちが美味しいかも。
のどごしが若干程度だけどいいような。
続いて太麺。
これも些細な違いだけれど、このつゆだとこっちがちょっと美味しい気もする。
「これで最後、また細いのから順に食べてみて下さい」
今度細いのを食べると確かに違うのがわかる。
中太、太と食べ比べ直すと違いは明らかだ。
「うーん、細い方も悪くはないんだけれどなあ」
「でもちょっと時間が経つだけで全然違いますね」
金子先輩は頷いた。
「元々この製麺機も切る太さは一種類だけなんです。切る前の生地の厚さで太麺から細麺まで作ってみましたけれど、この製麺機で出来る最適な太さは今食べた太麺だと思っています。いつもは食べる時間がだいたいわかるのでそれにあわせて茹で上げていますけれど、いつ客が来るかわからない模擬店ではそれも出来ません。かといって茹で置きで伸びた感じなのもあまり出したくないです。どうせなら一番美味しい状態で出したいですから」
あ、美鈴さんが頷いた。
「ちょっと待ってくれたって。何とかなる方法を思いついたって言っている」
真理枝さんが僕にそう教えてくれる。
「どうするんだろう?」
「連絡したから少し待ってくれだって」
しばらくしてやってきたのは美智流先輩と深川先輩だ。
美鈴さんがとととと歩いて行って二人に何か話しかける。
「うん、うん。十分程度ならそれは出来ますね」
「私もそれくらいなら可能なのだ」
「二人では当番的に厳しいのでもう一人呼びましょう」
「鳴瀬先輩か塚原先輩あたりなのか?」
「あの二人は勿論可能でしょうけれど、こういったお祭り事はあまり得意では無いでしょう。大変不本意ですが抜田君にお願いすれば喜んで来てくれると思います」
「能力的には問題無いがセクハラ注意なのだ」
「でもあの人は呼べば来るでしょうから。能力的な問題は残念ながらありませんし」
何の話し合いをしているのだろう。
悪い狸こと抜田先輩の話が出てきているけれど。
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