第五章 隣は何をする人ぞ
第21話 うどん屋プロジェクト
その1 新学期の始まり
十月になり新学期が始まった。
この辺は東北だからか一気に気温が下がっていく。
昨日までは半袖で充分だったのにもう長袖の上着が欲しいという感じだ。
さて家の方は
新たな畑は愛菜さんの管理、春は菜の花畑で秋はコスモス畑になる予定だそうだ。
本人曰く『いちめんのなのはな』をやってみたいとの事。
あれって山村暮鳥だっけかな。
ただ厳密には菜の花でなくカラシ菜の種を植えたそうだ。
「花はほとんど同じだし、種でマスタードを作ってみたいですし」
だそうである。
菜の花畑の面積は
これは『いちめんのなのはな』を再現する最低限の広さだと本人が言っていた。
広いが一気に開発したので手間は
① 雑草を念入りに魔法で根まで焼き尽くす
② トラクタでとにかく耕しまくる。
③ 作物を作る訳で無いから肥料は燃やした草の灰だけで省略
④ 一年生五人と
そんな感じで『いちめんのなのはな』予定地が完成した。
大変だったのはいつも通り雑草除去担当の摩耶先輩である。
トラクタ作業は大体運転したい人がやってくれるから。
今は苗状態の小さな菜の花の草が生えている状態だ。
他には露天風呂にサウナが併設された。
作りは竹小屋と同じ全竹製で広さは竹小屋の三分の一程度。
ただしこのサウナは女性専用だ。
何故なら魔法を熱源としているから。
つまり摩耶先輩か亜理寿さんがいるとき以外は使用不能。
なおサウナ後用の水風呂も一応出来ている。
幼稚園児用のプールに竹小屋のある沢から引いた水を流しているだけだけれども。
サウナの後にこれに浸かると気持ちいいそうだ。
おかげで皆さん更に長風呂になってしまっている。
学校は相変わらず授業時間が長いが自動車学校が無くなった分楽になった。
相変わらず数学とかが難しいけれど院を視野に入れている以上やるしかない。
そんな訳で平日は木曜まで静かな日々が続く。
そんなある木曜日。
ちょっと気になる事があったので真理枝さんに聞いてみた。
「そう言えば学園祭とかあるそうですけれど、何かやる予定はあるんですか?」
クラスの連中に学園祭で何かやるか聞かれたからである。
医理大はサークル活動がそこそこ盛んだ。
何せ娯楽らしい娯楽が無いから仕方無い。
そんな訳で文化祭もそこそこ盛り上がるらしい。
ただ外部に披露するというより多分に学内の身内で楽しむ感じのようだ。
何せ田舎過ぎて地元住民なんて研究団地の住民と学校関係者しかいないし。
クラス内でもサークル所属の連中だけでなく、有志で屋台をやる奴もいるようだ。
「うーん、獣人や妖怪で何かすると言うのは特に無いなあ。他のサークルに所属している子もいるしね。例えばアンドレアはツーリング部でホットドッグの屋台をやると思うよ。例年やっているみたいだし」
「真理枝さんはどうする予定ですか」
「私は適当に顔見知りのところを食べ歩くくらいかな。ただ今年は露天風呂は沸かしておこうよ。どうせ皆入りに来ると思うし」
確かにそうだよな。
「私達も特にやることも無いし、のんびりしましょう」
亜理寿さんもそんな意見。
そうだよな。
どうせ僕も特にやりたい事も無いし。
下手に模擬店でも出したら面倒だし、もし売れずに損したら大変だ。
売り子を笑顔でやるような気力とかも無いし、買って貰える知り合いも多くない。
何せクラスでの友人は大体皆さん貧乏自慢だからさ。
「そうですね。精々露天風呂を沸かして布団を用意して待っているくらいで」
「それはきっと必要になると思うよ。皆さんお祭り気分になるから」
「でもそれじゃいつもの週末と同じですね」
「まあそんなものよ」
そんなものかなと僕も思う。
何せ僕も高校時代まで部活とか同好会とかをやった事は無い。
文化祭もクラスで強制参加のものだけやって、あとは適当にさぼっていた。
高校時代は有料の模擬店とかは駄目だったし。
そういう意味では大学の学園祭はもう少し色々楽しめるかな。
勿論作ったり売ったりする方でなくお客様の方として。
そういうつもりだったのだ。
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