その6 キノコ採取も体験済
もう一回全員で二周ずつ走ってバイクの方は終了。
タイムは摩耶先輩が圧倒的に速い一分二十四秒を出した。
しかし、だ。
「摩耶、お前バイク動かすのに魔法使っただろう」
イライザ先輩の疑念は皆の疑念。
あんな速度で曲がれるわけはない。バイクの動きがおかしい。
そんな色々疑問が残る走り方をしていたのだ。
例えば亜理寿さんは自転車に乗って空を飛べる。
摩耶先輩がバイクを魔法で自由自在に動かせないとは誰も想っていない。
「技もタイムのうちだ」
摩耶先輩自身そんな感じで魔法を使ったことを事実上認めている。
さて、そんな訳で土埃で汚れた皆さんは外側から露天風呂へ直行。
僕は風呂の窓の鍵を閉め、『男子入浴中』の札を立てさっさとシャワーを浴びる。
何せ露天風呂から皆さんが上がるのを待っていたら夕食になってしまう。
だからさっさとシャワーを浴び着替えてリビングへ。
皆さんこの時間は露天風呂にいるらしく人は少ない。
金子先輩、美鈴さんがキッチンで夕食を作っている他は誰も……いや。
亜理寿さんをはじめ深川先輩、寺原先輩、川原先輩が戻ってきた。
感じからすると露天風呂から戻って来た模様。
「露天風呂が混んできたので先に上がったのだ」
確かにこれだけここに誰もいないという事はそうだろうな。
「ここ以外の皆さんは露天風呂?」
「真理枝さんと今日いらした三人、あと美久先輩も合流して山の方を歩いていると思います」
まだ散策中なのか。
「渓流の方とか山のサバイバルゲーム場とかを見に行くと言っていましたから。でもそろそろ戻ってくるのではないかと」
なるほど。
「今日は川の方はどんな感じだった?」
「夕食のお楽しみなのだ」
なるほど、魚とかを捕った訳か。
「前から泥抜きしているドジョウやウナギもありますから。多分色々出してくれるのではないかと思います」
以前は川魚というのは海の魚と比べて泥臭かったり美味しくない印象があった。
でもここで実際に食べてみてイメージが一気に変わった。
確かに寄生虫問題があるので刺身には出来ない。
でも特に煮魚なんてやると普通の海の魚以上に美味しいと感じる。
まあ美鈴さんや金子先輩の料理が上手なせいもあるのだろうけれど。
「ただいまー!」
真理枝さんの声だ。
皆さん帰ってきたらしい。
「美鈴さん、キノコの分別お願いしていい?」
キッチンから美鈴さんが玄関方面へ。
どれどれと僕らも覗きに行く。
玄関の板の間に新聞紙を敷き、採ったキノコを並べて美鈴さんが分別を始めた。
「このキノコは採ったときは大きくて白っぽくて綺麗だったのに黒ずんじゃった」
「トンビマイタケで食べられるって。これから料理してくれるそうよ」
「あとこの茶色くて小さいいかにもキノコっぽいのは」
「この辺ではサワモダシって呼んでいるみたいだよ。やっぱり美味しいって」
「この大きくていかにもキノコって形のは」
「残念、毒だって」
「この白くて薄くていかにも毒っぽいのは?」
「これはブナカノカで食べられるって」
「うーん、何度聞いてもよくわからないなあ」
稲森先輩の台詞に美鈴さん以外の全員が頷く。
確かにキノコはよくわからない。
同じに見えて違ったり、違うようにしか見えなくても同じだったりするから。
「それはそれとしてお風呂で汗を流してきたらいいのだ。そろそろ入っている連中も上がってくると思うのだ」
「そうだね。山を歩いて汗もかいたし」
真理枝さんが頷いた。
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