その5 露天風呂完成の夜
その後四日間ほどかけて露天風呂は完成した。
四日間もかかったのは単に遊んだり色々していたためである。
サバゲーをやったりバイクで山を走ったり川エビを捕ったり。
更に一時間位露天風呂に浸かったりしているのだから仕事が遅いのは当然だ。
でもこの露天風呂作りも遊びの一つ。
作る過程を楽しむものだから仕方無い。
露天風呂はなかなかいい感じに仕上がった。
風呂場経由だと狭いので外から入れる扉も新設。
屋根付き棚付きの脱衣場も出来た。
浴槽部分の半分に屋根も付いた。
なおこの辺は全部竹で出来ている。
あの稲森先輩設計の竹小屋と同様の造りだ。
基本竹を縛るだけの工法。
今回はあえて乾燥させず青竹のまま組んでいる。
その分『持ちは悪いかもしれない』と稲森先輩は言うけれど雰囲気はいい。
今夜は露天風呂完成を兼ねてのお祝い会。
まあ毎夜なんだかんだ理由をつけては宴会をしているのだけれど。
ただ宴会と言っても時間が長すぎたりべったりしていないから気は楽だ。
実質食事会みたいなもので一時間程度で終わるし。
「しかしいいよなこの場所。何か久しぶりに童心に返ったわ」
川戸先輩がそんな事を言う。
「バイクを山でかっ飛ばす童心なんて存在するのかよ」
すぐ同じく建築クラブの千金先輩に突っ込まれた。
「川エビくらいはまた捕りにきたい。うちの食卓が少しましになる」
これは同じく建築クラブ二年の因原先輩。
「おまいは貧乏暮らしに慣れすぎ。一人暮らしで月食費二万以下は普通無理」
「でもうちのクラスの連中も似たようなものですよ。第二食堂で納豆卵かけご飯なんて昼食で食べていたりしますから」
「まだ甘いな。通は八枚切り七十七円の食パンを二袋冷凍して一週間食べ続ける」
「そのうち栄養失調で死ぬぞ」
「事実ここで大分体調を取り戻したような」
「おいおい」
どうも建築クラブの男性陣もここに慣れてしまった様子だ。
「しかしここは文明以外は女子ばかりだし、これで此処も来にくくなるな」
川戸先輩がそうぼそっと言う。
「稲森さんか門山先生の引率の元ならまた来てもいいんじゃないの、休日なら」
「どうせバイクの連中とかサバゲの連中もそうしているしね」
「美鈴さんもそれで大丈夫だと言っています」
真理枝さん、稲森先輩、亜理寿さんがそれぞれそう言ってくれた。
でも大丈夫かなそんなにここをオープンにして。
「私の引率では駄目かね」
微妙に教授は不満顔。
「
「うーん。でもこの川エビ唐揚げと枝豆燻製はやっぱりビールが必要だろう」
「それに自分達で作った露天風呂に入れないのは可哀想じゃ無い?」
「そうだね。ならこの面子は連絡あればOKという事にしようか、美鈴さんどう?」
「それでも大丈夫だそうです」
「でも教授は運転役同行が必須かな。今日も運転は稲森さんか門山先生だろうし」
この二人は飲まないし、教員宿舎は女子寮の隣だ。
「ところで皆さんはこれから実家に帰られるんですか」
「実家帰っても遊ぶ相手がいないしなあ」
「俺はこの後泊まり込みバイト。ここは田舎過ぎてバイト先無いし」
「おいは一応帰るけれど、多分すぐ戻ってくる予定」
皆さんまあそんな感じだろうな。
うちのクラスの連中も大体そんな感じだ。
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