その4 燻製試食かねて昼食

 お昼は久しぶりに洋食だ。

 フランスパンとバター、スモークしたチーズ。

 小坂井ウサウサ畑で取れたキュウリとミニトマト。

 それに買ってきたレタスとスライスしたタマネギとハム。

 更に他にスモークした色々が並んでいる。

 ウグイは内臓と頭を取った状態で、鮒は切り身にして骨を外した状態だ。

 特に川魚は甘辛く煮たものはここで食べた事があるけれどスモークは始めて。

 どんな味なんだろう。


「いただきます」

 最初に皆の手が伸びるのは、やっぱり未知なる食材のスモーク鮒だったりする。

 僕もやっぱり一切れ頂いてみるわけで……

 ん? ちょっと知らない味だけれどよく味わってみると美味しい。

 これはひょっとして癖になるかな。

 燻製にしたからかちょっと肉っぽいうま味があるような。

 でもよくわからない。

 もう一口。

 ちょっと燻製の癖が強いかな。

 これは寝かせると馴染むのかもしれない。


「旨い、これ」

 イライザ先輩とアンドレア先輩はすこぶる気に入ったようだ。

「やっぱりもう少し寝せた方がベターかな。でも悪くない」

 美鈴さんがにやりとしながら冷えたビールをお盆に入れて出してきた。

「うう、これは申し訳無いが頂こう。稲森君帰りの運転は頼む」

「仕方無いですね」

「お酒は二十歳になってから、という事で私も遠慮せず頂きます」

「悪いなレア、そういう訳で失礼」

 早くも昼間からアルコールが出てきてしまった。

 もっとも全員というわけでは無い。

 教授、美智流先輩、イライザ先輩、あと建築クラブの川戸先輩といったところだ。

 他は烏龍茶。


「これお茶漬けでも合うと思うな、絶対」

「卵やチーズの燻製はわかりやすい美味しさだよな」

「ジャガイモも悪くない」

「枝豆が止まらないの」

 そんな感じで他の食材も含めてどんどん消えて行く。

 鮒の燻製なんて大きな半身が八枚あったのにあっと言う間に全滅だ。


「緑に頼んで鮒を定期的に確保したくなりますね」

「でも乱獲すると一番怒りそうだよな」

「産卵して子供がいるビオトープ部分をそのままにしておけば、川にいるのは結構捕っても大丈夫って言っていました。ただ鮒が大きくなるには数年かかるので取り過ぎると大きいのがいなくなるとも」

「そっち系の知識は緑は詳しいよな」

「川関係は本当に詳しいよね。医学部だけれども」

「取り敢えず皆が帰ってくるまで鮒漁はやめとくか。大きいのが減ったらまずいし」

「そだね」

 大々的な魚採りは取り敢えず休止予定の模様。


「でも緑先輩に限らずここに戻って来たら驚くんじゃない。露天風呂も出来たし」

「実はまだ未完成だけれどね」

「あとは脱衣場と屋根と飾りだっけ」

「昨日の昼から工事は止まっているけれどね。遊んでばかりで」

「午後から一気に進めるよ。教授せんせいは離脱予定だけれどさ」

「酒好きだけれど弱いものね」

 川戸先輩と稲森先輩が言うとおり、教授は既に眠そうだ。

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