その2 午後のお散歩

 お昼のつけ麺を食べたら一部の人は寮へと帰宅。

 医学部と薬学部は明日からの平日三日間も授業があるから。

 残っているのは授業が無い理学部工学部の面々と、車等の交通機関持ち。

 女子が多い医学部と薬学部が抜けると大分人数が少なくなる。

 残っているのは美智流先輩、イライザ先輩、稲森さん、川原さん、寺原さん、摩耶さん。

 それに車を使える金子さんといったところだ。

 アンドレアさんはバイク乗りだけれど授業が大変なので寮に戻るとのこと。


 大学まで送迎した車が戻ってくると取り敢えず自由時間。

 洗濯したりバイクで山の中を走ったり読書したり。

 なお洗濯物は一番東側の八畳間を乾燥室にしている。

 フックで柱等に紐を引っかけて吊るし、摩耶さんの魔法でサウナ温度で強制乾燥。

 ただ僕が様子を見に行くのはちょっと憚られる模様。

 何せ下着まで干しているようだから。


「さて、暇だからぐるっとこの辺を回ってみないか」

 摩耶さんがそう提案。


「いいですね。どんな感じで回りましょうか」

「ここから川沿いを上っていって、ため池をまわって奥の沢に入り、川沿いを登って最後は尾根からこの家の裏に戻ってくるなんてのはどうだ。このコースなら今回皆が開発したところも大体観る事が出来るだろ」


「いいねそれ。でも洗濯物の方は?」

「帰ったら一度空気を入れ換えて、もう一度温度を上げれば綺麗に乾くだろ」

「そうだね。何ならバイクでうろうろしているイライザも呼ぶ?」


「ちょっと本人に聞いてみます……」

 美智流先輩はちょっと目を閉じる。

「通じました。戻ってくるそうです」

 何だ今の。


「美智流先輩レベルだと任意の相手に直接連絡できるんだよ。サバゲの時も死亡宣告とかやっていたよね」

 真理枝さんが僕の表情で気づいてか説明してくれた。

「まあ知り合いにしかしませんけれどね」

『こんな感じに話しかけます。相互会話も可能です。心を読む処までは出来ないのでご安心を』

 なるほど。

「ほぼ同じ能力を緑も使えますけれどね」


 神レベルだとそういう事も出来るのか。

 そんな訳でお茶入りのペットボトルをディパックに入れてお出かけ。

 玄関を出たところでバイクの音が近づいて来た。

 イライザ先輩だ。


「間に合ったかな」

 エンジンを止めヘルメットをミラーに引っかけてそのままついてくる。


「どの辺まで行ってきたんですか」

「バイクで登山道の方を何処まで走れるかやっていた。見晴台まではカーブが多すぎて無理だな。その上は何とか尾根上まで行けるが」

 そんな事を話しながら道路を横切りあぜ道へ。


「ウサウサの畑もそれらしくなってきたね」

 畑の横を通って川沿いへ。

 川は確かに一度コンクリで両側や底をを固めている。

 でも今ではその上に砂が乗り場所によっては草も生えてかなり自然な感じだ。

「水が綺麗だね」

「膝くらいの深さの場所もありますよ。そこに結構魚がたまっていたりします」

 寺原先輩がそう教えてくれる。


 川に沿った道を川上方向へ。

 やがて家のある側の山がこっちに近づいてくる。

 水田跡の幅はどんどん狭くなっていく。

 そしてもうすぐこの谷戸の行き止まりというところで、一箇所だけ水を張ってある田んぼ跡があった、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る