その9 夕食時にも情報収集
夜のメインはバーベキューグリルで焼く焼鶏と焼とんと焼き野菜。
焼鶏と焼とんは串に刺して焼いている本格派っぽい奴だ。
実は冷凍の安物らしいが炭火でそれらしく焼いているので結構美味しい。
ご飯は持ち寄った炊飯器三つと大鍋で炊きまくった。
味噌汁も大鍋で具沢山の豚汁状態のものを用意してある。
何せ人数がいるので色々大がかりだ。
ちなみに会費は今日明日で一人千円。あとは足りなくなったら徴収するそうだ。
年長組はアルコールも持ち出している。
焼酎のジュース割りとか炭酸割りがほとんどだけれども。
それにしても女子ばかりだよな。
前に真理枝さんにそれなりに納得出来る理由は聞いた。
けれどそんなに男性型の妖怪等は少ないのだろうか。
ちょうど一番詳しそうな人が前にいたので聞いてみた。
「美智流先輩、女子ばかりですけれど男子で参加するような亜人はいないんですか」
「学内にいない事は無いのですが、男子の亜人は皆さん個性的すぎまして」
美智流先輩は苦笑しつつ教えてくれる。
「私の知っている限り美山医理大には七名の男性亜人がいます。種別で言うと吸血鬼、狼男、雷獣、鬼、狸、インキュバス、仙人です。でもこういう処にお呼びしてもいらっしゃらない方が半分で、残り半分は呼ぶと大変か面倒な方です」
どういう意味だろう。
「具体的に言うとナルシストと変態と孤独好きなのだ」
近くにいた深川先輩がそうぶっちゃけた。
「仙人の鳴瀬先輩は賑やかな処には出てこないし、雷獣の太田も静かな処が好きなのだ。あと鬼の塚原さんも誘えば来てくれるけれど基本的には単独派。そして残り四名は呼んではいけない人々なのだ」
うーむ。
「具体的にはわかりませんが取り敢えず聞かなかったことにします」
「それが賢明なのだ」
深川先輩がツインテールを揺らしながらもっともらしく頷いた。
なんだかな。
「ただイライザ達がやっているバイクツーリングのクラブは普通に男子メインですから、その関係の皆さんがお邪魔することはあるかもしれませんね」
「というか私とレア以外の七名は男子だけどな」
イライザさんがこっちを向く。
「連休明けの土曜にでも顔を出すから宜しく頼む。文明は教習所でいないかもしれないけれどな」
「確かにそうですね」
免許取得までは仕方無い。
「まあ雪が降ったらスクーターで通学は不可能だしな。自動車免許を早く取って慣れた方がいい。車はあてがあるのか?」
「免許を取ったら親が買ってくれるというので」
「いいな。でもまあここから通うんじゃ車は必需品か」
「本当はそういうの無しで寮住まいの方が安いんですけれどね。父としては生まれ育ったこの家をどうしても使いたかったみたいです」
その辺は実のところ父と母で結構揉めた。
僕も車が欲しかったから母に色々頼み込んでやっと許可が下りたという感じだ。
「でもおかげで私達もこうやって色々堪能できますから」
「そうだよな。自分達用のオフロードバイクのコースが出来るとは思わなかった」
「私もなのだ。溜め池も水路もなかなか攻略しがいがありそうなのだ」
「どんな感じに攻略するんですか」
深川先輩がにやりと笑う。
「取り敢えず使っていない田んぼの一部に水を入れて水位をキープするのだ。これだけでまた色々な魚や生物が増えてくるのだ」
「浅い池みたいな感じにですか」
「そうなのだ。今ならまだドジョウの産卵期に間に合うし、他にも色々な小魚等が増えるのだ」
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