その10 一日目は無事終了

「今日確認したあの田んぼですね」

 亜理寿さんも話に加わった。


「そうなのだ。田んぼ一枚分だけ水を入れた場所を作るのだ。今日は余分な草を摩耶に焼き払って貰ったのだ。あとはちょっと重機で整備した後水を張ってやるのだ。そのままある程度放っておけば自然といい感じのビオトープになる筈なのだ」

 そんな作業も考えているのか。


「どんな魚とかが来るんですか」

「ドジョウとかフナとかが期待できるのだ。ナマズとかウナギ等も来るかもしれないのだ。他にタナゴとかも増えてくれると面白いのだ」

 何か楽しそうだな。


「一月位して土と水が落ち着いたらアシとか色々生えてきて姿も変わると思うのだ。そうするとまた環境がいい感じになるのだ」


「植物の植え付けとか魚の放流とかはしないんですか」

「植物も魚や昆虫もこの環境から育ったものを使うのが正しいのだ。下手に他から持ってきて全体の生態系が壊れたらたまらないのだ」

 なるほど、さすが龍神。


「水量とかは大丈夫なんですか」

「ため池には地下水の流入があるようなのだ。それに上流にそれなりに水が綺麗な川も流れているのだ。だから冬場乾燥が続かない限りはまず大丈夫だと思うのだ」

 よく調べているなあ。


「あとため池の上流部と川の部分にはヤマメがいるのだ。是非とも何匹か捕まえて焼き魚で味わいたいのだ」

「今日はちょっと網が届かなかったですけれどね」

「明日はもっとえげつない獲り方を試すのだ」

 どんなやり方だろう。


「バッテリーとか毒流しとかじゃないですよね」

「文明も古いネタを良く知っているのだ」

「何かサバイバル系の漫画で読みましたから」

「大丈夫、そこまで酷い技では無いのだ」


 まあ龍神様なんだからあまり自然に酷い事はしないだろう。

 でも『そこまで酷い技では無い』という事はそれなりに酷い技なのだろうか。

 まあその辺は明日のお楽しみだな。


「上手く行けば明日の夜は川のサバイバルメニューも並ぶのだ」

 まさか魚以外の変なものも並べないよな。

 僕自身は明日も休憩所作り予定だから川の方は行かない予定。

 だからやばい物があってもきっと夕食まで気づかないのだけれど。


 夕食が終わったらバーベキューグリルはそのままにして他を片付け。

 それぞれリビングや八畳間ダブルの部屋に移る。

 寮へ帰る人も出てきた。

 美智流先輩と猫又さんがそれぞれ車で送っていく。


 僕もそろそろ二階に移動しよう。

 風呂は明日朝シャワーを浴びればいいや。

 そんな訳で廊下に出て階段へ。

 ちょうど亜理寿さんもリビング側から階段の処に来たところだった。


「もう寝るの?」

「ええ、明日もいろいろありそうですし。文明さんは」

「同じく。身体を動かしたのは久しぶりだから」

 そんな訳で亜理寿さん先で階段を登り、上の踊り場で別れる。


「それではおやすみなさい」

「おやすみなさい」

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