その4 きっかけ
「畑をやってこれもやったんじゃ相当に大変だったんじゃないかな」
「主に摩耶さんがね。他は体力がある獣人が主だったし人数もいたしで大丈夫だよ」
「
なんて話しながら来た道を辿って家へと下る。
「今日は何をする予定?」
「畑と道の整備かな。あとは美久コンが水場のところに休憩所を作るんだって張り切っていたからその準備。竹を組み合わせて作るって。竹は必要な分切り出してもいいよね」
「勿論」
「よしよし」
何か楽しそうだよな。
何か僕も作業したい気分になってしまう。
でもいざ作るとなると何をすればいいかわからない。
何せ生まれ育ちずっと東京近郊の住宅地。
ここ田舎に行ったのも小学生の頃まで、それも数回だけだ。
何が出来るかなんて思うと何も思い浮かばない。
休憩所を作るなんて聞いて面白そうだと思うくらいで。
実際に僕が竹で作れそうなのは原始的な弓矢くらいだろう。
作って遊べば案外面白そうだけれども。
それにしてもだ。
「こういう道を開いたり何か作ったりって発想や知識とか、田舎暮らししようって考えはどこから出てきたんですか」
思わずそんな間抜けな質問をしてしまう。
「うちの家は街中の医者でね、こういう田舎に憧れていたんだ」
「父が人間で代々続く医者の家系、母が兎の獣人でね。ずっと都市近郊の住宅地で育ったんだ。それでもぎりぎり開発されていない山とか崖とかあって小さい頃はよくそんなところで遊んだなあ。
中学高校は医学部を目指して真面目に勉強しててね。それで無事大学に受かったらあんな事やこんな事をやってやるぞって色々考えていたの。秘密基地を作ったりとか色々ね。それでちょうどいい田舎っぽいここの
なるほど、そういう訳か。
「私の場合はそこまでじゃないな。ただ実家のある場所、元々は田舎だったんだけれど開発されて普通の住宅地になっちゃってね。獣人の本能としてもっと田舎に住みたいなと思った訳」
うん、その程度ならわかる。
「私は元々人が多いところが苦手でしたので。学生寮だと人口密度が高いですし何時何処で誰に見られているかわからないですから。でも此処の家で週末賑やかなのは不思議と大丈夫ですね。魔法を使っても大丈夫なせいだけじゃないと思います。何故かはわかりませんけれど」
ふむふむ。
「僕はたまたま親父の実家があったから住んでいるだけなのにな」
「でもおかげで私達も楽しくやれているんだから感謝しないとね」
「あと免許取得の際には是非とも軽トラをよろしく」
「それはいいっての!」
おいおい。
でもまあ僕も楽しいしまあいいか。
実際食事代とかも一人暮らしの時と比べると安く済んでいるしさ。
電気代とかガス代は食事代よりはかからないし。
竹林を抜けると家の裏だ。
切り出したらしい竹が数十本横にしておいてある。
「これは?」
「道を作るときに切り出した竹。枝を払って使えるようにしておく予定だよ」
「色々な材料に使えそうだからね」
なるほど。
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