第9話・宝石の誘惑②
リューネとレイアは、サリヴァンに全てを捧げた。
サリヴァンの妻として生きていこうと、心に決めた。
サリヴァンには10人以上の愛人が存在し、正妻は既にいる。
そのことを後で知ってもなお、サリヴァンを愛して捧げた。
むしろ、正妻の座を奪ってやると言って、サリヴァンを驚かせた。
それくらい、サリヴァンに夢中だった。
アスモデウス本家に挨拶に行き、正妻と愛人たちと顔合わせをし、驚いたのが全員が仲良しで、リューネたちもすぐに受け入れてくれたことだった。
それから1ヶ月、セーレ領を出てから3ヶ月が経過し、リューネたちも変わった。
愛人たちとのお茶会やショッピング、化粧やファッションを習い、女性らしく美しく着飾るようになった。
それも全て、サリヴァンのため。
言葉遣いも変わり、宝石を身につけ、女性としての自分を磨く。
自分の家族やアローのことなど忘れ、サリヴァンを愛し続けた。
モエは悔いていた。
何も出来なかった自分は、アローに相応しくないと思った。
このことを知ったアローは悲しむ、だがそこに自分が割り込むのは、余りにも苦しかった。
アローを思うが故に、モエは苦しんだ。
そしてサリヴァンに頼み込み、アスモデウス本家のメイドとして働くことで、なんとか自分を保っていた。
もうセーレ領には帰れないと嘆き、そんな価値も自分には無いと言い聞かせた。
そして、その時は来た。
**********************
リューネとレイアは、サリヴァンの執務室に呼ばれた。
部屋に入ると、アスモデウス本家のメイド服を着たモエもいる。
「やぁ、少し……残念な話がある」
「どうしたの? そんなに改まって?」
「大事な話ですか?」
「ああ……」
サリヴァンは執務机で腕を組み、目を伏せる。
「リューネ、キミの元婚約者アローに、スパイの疑惑がある」
「………アロー? ああ、アローね……スパイの疑惑!?」
リューネは、アローのことを忘れていた。
「実は、アローが所用でアスモデウス領から去った後から、アスモデウス本家の重要書類がいくつか紛失してるんだ。疑いたくないが、状況からアローとしか考えられない……」
「……それ、本当なの?」
「ああ……申し訳ないが」
「じゃあ、私が直接確かめるわ。セーレ領に行く」
「お姉ちゃん、私も行く……サリヴァンを苦しめるなんて、許せない」
2人の瞳は怒りで燃えていた。
「待ってくれ。証拠の書類を抑えればアローを罪に問える手筈を整えてる。現在、四大貴族の三家に確認をとり、現当主アローの処遇を決定する」
「現当主? ハイロウ様は?」
「ああ、彼は過労で亡くなった」
「ふーん」
「そうですか」
リューネとレイアは特に感情を浮かべなかったが、モエは真っ青になり震えていた。
だが、サリヴァンもリューネたちも気にしなかった。
「君たちの元婚約者だ。死罪だけは勘弁してやりたい」
「どうでもいいわ。でも、ちゃんと謝罪はして貰わないとね」
「そうですね。このアスモデウス家に泥を塗った罪は償って貰いませんと」
こうして、アローの処遇は決定した。
その処遇は、セーレ領の没収と72の地域で全くの未開発地域である『マリウス領』への追放。セーレ領はアスモデウス本家が管理する事で決まった。
マリウス領は危険な生物が闊歩し、住んでる人間が居るかどうかも分からない大地。それはつまり、死罪と変わらない。
その決定を受け、リューネたちはセーレ領へ出発した。
サリヴァンの話によると、アローはアスモデウス本家の馬車を借りてセーレ領へ戻ったらしい。
アローを拘束し、アスモデウス本家で裁きを下す。
アローに裁きを下すため、リューネたちはセーレ領へ向かう。
アローを一目見たいがために、モエはセーレ領へ向かう。
サリヴァンに出会い4ヶ月、リューネたちはセーレ領へ帰郷した。
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