第2話
「ンガ! ンガンガ!」
声が聞こえる。どうやら夢に思い老けさせてくれる時間は無いらしい。
「わかった……起きるからやめてくれ」
体を強く揺さぶられる気持ち悪さを感じながら私は【カナン】は目をパチリと開いた。
私を起こそうとする二足歩行の巨大な黒いモジャモジャの【ピューイ】は私を必死に起こそうとしている。空は満月が浮かぶ夜。
私は誰の家か知らない屋根の上で仮眠を取っていた。
「ピュー、私はもう起きてる……」
目覚めの悪いイラつきを抑えながら上半身を起こす。ピューイの全身は毛で覆われてるのでこしょばい。
「ンガ? ンガ……ンガッ!」
ピューイは何か伝えたいようにガドル語を話す。寝起きで頭が重く、何も頭に入れたくないが仕方ない。
「うん? さっきアイツが通ったって?」
それを聞いた途端頭が目覚めた。というより強制的に目覚めさせられた。
「それを早く言え!」
カナンはイラつくように黒い外套を頭まで被り、屋根から降りようとするが足を滑らせ屋根から落下した。
しまった。
急いで杖を取ろうとするが服の奥に入って取り出せない!
ここから落ちれば重症は免れ…………
「ンガァァァァァァァァ!!」
カナンより先にピューイが先に下に落ち、ブロックの道に落ちる私をキャッチしてくれた。
「ありがとう……た、助かった」
「ンガ?」
ピューイは大丈夫かと聞いてくる。
「ピューのお陰で……もし良ければこのまま追いかけてほしい。正直私が走るよりはこっちの方が速い」
「ンガンガ」
ピューイはわかったと言って私をお姫様抱っこしたまま走り出した、速い、頬に当たる風が強く感じる。
人通りの少ない裏路地を行き、ピューイがアイツの匂いを追っていく。
カナンは次こそは大丈夫と杖を取り出しやすい位置にしまった。
突然、ピューイは道路の中心で止まりだし、その衝撃に首を痛めた。
「なんだ突然!」
「ンガンガ」
臭いが消えた。
「勘付かれたか……ハァ、目立ちたくはないんだが」
カナンは銀色の小さな杖を取り出して「メルン」と唱えた。
すると色んな足跡が光って浮かび出す、成人男性、女性、子供、老人の足跡、これは今日ここを通った人間の足跡である。
新しい奴ほど光が強い。
「これだ」
カナンは今できたと思われる足跡を指差し他の足跡を消した。
「追いかけてくれ」
一つだけの足跡を矢印にピューイは走っていく。まずは足跡は何度も曲がって曲がって私達を巻こうとしているが人混みの少ない夜だ。ただの悪足掻きに過ぎない。
そして必死に逃げる男の後ろ姿が見えた。
「ドルン」
カナンがそう唱えると杖の先端から衝撃が放たれ男の背中に当たった。
男は衝撃に転び奴も杖を持つ、つまり戦うという事か。
「降ろしてく……ツッ!」
降ろせとピューイに言うと落とされた。尻が痛かった。
「ンガ……」
「謝るくらいなら気をつけてくれ!」
相手はその隙を突いただろう、私が落とされた瞬間に火球を数発放つ。
だが私はその程度造作もない、ピューイに視線を向けながら奴の火球を銀色の杖に吸収させていく。
「お返しだ」
炎は火炎放射に変わり男を火で包んで行く。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ンガンガ!」
「大丈夫だ、目立たないようにすぐに消す。スヤリル」
私は水の魔法で男を包む炎を鎮火させた。
カナンは肩で息をする男にゆっくりと、杖を握らせないよう杖を破壊して近づいていく。
杖を向け、男はひぃぃぃと恐怖の顔を浮かべる。
「命までは取る気はない」
「お前は……まさか最近嗅ぎ回っている黒衣の……【男】なのか……」
「私は女だ! ピュー! 離せ! もう二度と間違えれなくしてやる!」
カナンはまた杖を振るおうとしてピューイに止められるのだった。
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