第34話

そして魔王城の三階。暗闇の中を持っていたランプで照らしながらそっと歩いていく、あいつは四天王だと言っていたから、あと確実に三人はいるのだ。眩暈がする、フラフラする。休憩する?とイリアが聞く。大丈夫と僕が言うと、ほかのみんなも疲れてると言われた。仕方なく真っ暗闇の中で僕らは腰を下ろし、歌を唄うなど安らかな時を過ごした。メリッサの歌はセイレーンのようだった。僕はうとうととし、しばらく眠ったらしかった、あれからどれくらい過ぎたのだろう、僕らは魔王を倒した。村のみんなが出迎えてくれる、ハチマキを巻いたゴッグが手を振っている、鼻毛が出なくなったサーシャが笑顔でいる。土地神は相変わらず奇妙で物騒な雰囲気を携えている、僕らは帰ってきた、魔王を倒して。ああ、イリア、メリッサ君らもついてきたのか。水筒のひんやりした水が僕の頬を濡らし僕は飛び起きた。


「随分……寝てたのね」


メリッサが多分にこりとした。暗闇の中では表情がわからない。そうか、夢だったのか……


「魔王を倒した夢を見たよ」


そう言うと、メリッサはそれは夢じゃない現実になることだからと呟いた。そうだ僕らは四天王の一人をすでに倒しあと四人を残すだけになっているのだ。メリッサの歌が母の子守歌のように聞こえた。寝たら腹が減った。アンパンが半分残っている、それを食べて元気百倍になり、僕らは何事も起こらなかった三階を通り過ぎた。そして四階。四階は迷路になっていてイリアがマッパーをしながら出口にたどり着いた。四階にも誰もいない。


「まさか四天王とかいいながら一人か二人くらいしかいないのではない」


サーシャがそう言うと、今までかなりテキトーだった魔王軍の幹部のことを思い出し、そうかもしれないと思った。

そういえば鷹の爪のやつら、あいつらが先に乗り込んでいたはずだった、あいつらが残りは倒してしまったのではないのか。おめでとう、おめでとうと喝采が聞こえる、さっきの夢の続きが白昼夢となって襲ってくる、半端に寝たせいなのではと簡単に考えていた。そうだこれは夢ではないのだ、間もなく訪れる現実なのだ。そう考えると夢は綺麗にほどけて今のサーシャの鼻毛のようにさっぱりとなくなった。見えていない……


「お前鼻毛はどうしたんだ」


「は?」


サーシャが鼻毛ならいつもカットしてるよ!と激昂する。バカな。バカな。まるで恐ろしい魔王よりも。そんな現実が明らかになろうとしていた。魔王を目の前にして僕はおかしくなっているのだ、これだって夢だ。ついに鼻毛が出ているということを本人に伝えたのだ、でもそうではなかった。これはどういうことなのだ。悶々とし、五階にたどり着くと薄っすら霧のようなものがかかっていた、魔王なのか四天王の一人なのか。それがわからないまま僕らは先に進んだ。

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