第33話

こいつは強い、今までのボスは何だったのだろうと思うほどに。サーシャが全く効かないというわけではないのじゃない?といってまた魔法を打ち込んでいる。デオナズンは効かなかったのだけど、さっき風を送ったら手元の剣が狂った。その手から剣が離れるのを目撃した、慌てて骸骨剣士は拾いに行った。こいつには隙がある。そう確信した。疲弊した僕らは疲れる様子のないその骸骨剣士とずっと剣を交え、メリッサがアンパンマン新しい顔よ!といってなんだかアンパンを投げてきたのでそれを食べたら勇気百倍になった。


「ちっ!こしゃくな!」


アンパンを咀嚼しながら骸骨剣士のコアを探していると、さっきすこし破れた服の隙間からキラキラと光るコアのひとつ……やつが言っていたことが本当で本当にコアが複数あるのだとしたら、ここを狙えばコアの一つは破壊できるのだ。人間でいいうところの左胸の部分、人間と同じ場所にコアがついていた、破壊する!いまだ狙え!と叫ぶとそこをめがけてイリアの弓矢が、メリッサの鎌が激しく衝突する。コアはいともたやすくパキンと金属音をたてて壊れた。普通の魔族であればここで死ぬ。骸骨剣士は笑っていた。コアが複数あるのは本当だったのだ。この人間と変わらないいでたちのこの骸骨剣士の弱点は、多分多くはないのだ。僕はよく眠れていたのだとしたらと後悔などした。戦いの間中眠くて、メリッサなどが大丈夫?と声をかける。あまり大丈夫ではない。でも戦うのだ、もう少しなのだ、もう少しでこの苦しみも終わるのだから。そうして土地神からの呪いは解け、僕は不自然に笑いだすことはなくなり、またゴッグといっしょにくだらない祭りに参加するのだ。サーシャ、そうサーシャのためにも。刃を合わせて数十分、残りのコアは多分あとひとつかふたつなのだ。汗が目に染みて、それでもコアを探して、ようやく見つけた。さっきイリアが弓の引き金を引いたとき、銀の矢が骸骨剣士の左脛をかすめていた。そこからちらりと見える、光り輝くコア。そこだ!と僕が叫ぶとメリッサの大鎌が左脛をとらえザクっと切り込みをいれた。大鎌なので急所ははずれる、僕がオリハルコンの剣で多数の腕から繰り出される剣の技をものともせずそこに隙をついてそのコアを粉々にした。コアは綺麗に砕けた。


「ぬおおお!」


やはりだ、コアは二つだけだったのだ。骸骨剣士は見事だったと言って粉々に砕けた。アンパンは美味しかった。

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