第25話

魔人が虚空の中から現れて僕らが構えていると、魔人は忘れ物しちゃったといってジェラートピケのポーチを持ってきた。


「またアレな人なの!」


サーシャが言った。


「よくぞここまで来たな勇者たちよ、私の名はマジ・ビンボー」


「マジ!貧乏!」


「よくそんな自虐ができるわね!」


サーシャが言うと今日も卵かけご飯しか食べられなかったと魔人は言った。


「行くぞ勇者たち!」


魔人は炎を次々と繰り出してくる、僕らは軽々とかわし、サーシャがデオラを放つ、放った魔法は切り裂くように魔人の体に当たったが、平然としていた。


「お前たち昨夜は何を食べた」


「え……寿司」


イリアがそう言うと烈火の如く怒り出し、俺は昨日はお茶漬けだったぞといった。


「あなたの貧しい懐事情なんて知らない……覚悟して……」


「なんで魔王軍の幹部のくせにそんなに貧しくしてるのよ」


「パチンコで負けた」


「自分のせいじゃないの!」


イリアが魔人に弓矢を豪快に放ち、その弓矢にサーシャがデオラを放つ、こいつは流石に致命傷ではないかと思ったが魔人は簡単にはねのけてしまった、流石パチンコするような奴は強い。しかし全身ぬめぬめしたその裸の魔人がパチンコ店に出入りする様子はサーシャの鼻毛よりシュールでイリアなど笑いが止まらない様子だった。


「おのれ何がおかしい!」


魔人は憤り、かまいたちを放ってきた。風の刃が僕らを襲う。風の刃は僕らを切り刻んだ、すかさず傷口に薬草を投げてくるイリアである。


魔人はこれで終わりにしてやると極大呪文をためて放とうとしてきた。


「いけない!」


サーシャが相殺させようと呪文を投げる。そこにメリッサの強力な一撃が加わる。そして僕の鋼の剣が奴の右腕を捕らえた。


「バカな魔人めここまでだ!」


魔人はサーシャの鼻をみてなんだ?といってから


「俺も寿司が食いたかった……」


そんな断末魔をあげて魔人は消滅した。手ごたえのない敵ばかりが続く、これなら町にでるデカモンキーのほうが強いくらいだ。


「魔王軍って凄く弱いのでは……」


メリッサがそう言うとイリアもそうかもしれないといって考え込んでいた。

弱かったとしても僕らは魔王軍の幹部を倒したのだ。きっと卵かけご飯しか食べなかったせいで力がでなかったのであろうと言うとそうかもしれないとみんな納得していた、やはりギャンブルは怖い。しかしさっきの魔人はサーシャの鼻が気になっていた様子だった、見えているのは僕だけではない……のか?それは幻聴だったのかもしれないと今ではそう思う。


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