第24話

今度こそはまっとうなボスに違いない……僕らは不安と期待の入り混じった複雑な気持ちでそのボスに挑むことになった。沼地に巣くう魔人、強そうだ。酒場でほとんど魔人についての情報が得られずまたその噂と流した騎士たちとの遭遇もかなわず、僕らはできる限りの装備を整えて、イリアは山のような薬草を準備し、メリッサはまた寝て、サーシャは鼻毛が出ている、いつも通りの光景だ。行くぞおまえたち!と僕が号令をかけると元気よく返事をしたのはサーシャだけであとの二人は不服そうであった。何か文句でもあるのか。気にせず沼地のほうへと徒歩で向かうとその途中でメリッサが倒れた。メリッサ!と駆け寄るとすかさずイリアが水を飲ませている、のぼせただけみたいですとそれだけ言っててきぱきと処置していた、あいつはアホだが流石だと思った。メリッサは意識を取り戻し、私フルフェイスだから……と言い訳した。フルフェイスにビキニアーマーでもないメリッサは熱がこもりやすい。ゆっくり行こうかと僕がいうとメリッサはフルフェイスマスクの奥で微笑んだ……ようにみえた。


「気を付けてね」


「……ありがと」


サーシャと少し会話して、メリッサはまた歩き出した、少しふらつきがあるものの今度は足取りがしっかりしている


「僕が倒れても誰も介抱してくれないでしょうね」


そんなことをイリアが言ったので私がやってあげるとすかさずサーシャが言った。さすが僕の妹の鼻毛だ。


「サーシャさんは優しいですよね」


軽装のイリアははずむように言った、のほほんと会話している場合ではない魔人が迫っているのだ。魔人の住処が沼地をどんなに歩いていても空を掴むように何もない。その情報は本当だったのだろうか、僕らは地図を広げ沼地の隅々までチェックをした、酒場でマッパーが雇えればよかったのだろうがそんな路銀はもうないのだ。真っ赤なヒガンバナが咲き、まるで血の海のようなその沼地に滞在すること3時間、虚空の中からようやく魔人らしき者の咆哮が響いてきた。ようやく始まる、戦闘が。

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