第16話

僕らは祠の鍵を開け、ランティス大陸という砂漠の大陸へとやってきた。

たしか酒場で聞いた話ではここにも小ボスがいるらしい。そしていきなり戦闘になった。


僕がその大型サソリに剣で突き、妹がデオラを投げる。イリアが弓で遠くから狙いを定める、メリッサは寝ていた。


「ふう、随分苦戦したな、だんだん魔王の城に近づいてきているんだな」


「メリッサ、戦闘は終わったよ」


寝ていたメリッサが目をこすりながらのろのろと起きはじめる。


「……」


何も言わず欠伸をした。こいつは本当に大丈夫なのだろうか。


「なかなか大器ですねメリッサ」


イリアが注意を向けると彼女は何も言わずにうつむいた。

戦闘中に寝てしまうこのクルセイダー、マイペースにもほどがある。

思えばまだメリッサが活躍するのを目にしたことはない。連れてきて本当に大丈夫だったのだろうか?


「あ、ごめんなさ……い」


「次はちゃんと起きててね」


サーシャが笑ってこづくと釣られて微笑んだ。

イリアが負傷したメンバーの怪我の治療に勤しんでいる、ここの敵は随分強いようだった。薬草を百個持ち込もうとしたイリアの判断はあながち間違っていなかったのかもしれない。


「アレスさん、あなたも腕を負傷しているのでは」


「してるけど、これくらい舐めてれば治るよ」


「それはいけません」


そういってイリアは薬草を投げつけた。あいつらには魔法を使って治したというのにどういう差別だ。薬草を齧りながらイリアの方向を睨みつけるとイリアはぷいっとそっぽを向いた。あいつはある意味癒し系だから重宝されてる。僕だってできることなら魔法を使ってちやほやされたいのに。さっきデオラを投げつけたサーシャの鼻毛はやっぱり伸びていた。


「サーシャさん」


イリアがすかさず呼び止める。なあに?と言って振り返ったサーシャの肩に触れて埃を払った。


「肩に糸くずついてましたよ」


そういって微笑んだ。僕には薬草を投げつけたくせに。


「そうだ、サーシャ、お前はあまりにも軽装すぎるからこの大陸で装備を整えろよ」


「いやよ!このワンピース気に入ってるんだもの!」


「おまえ、遊びにきてるんじゃないんだぞ!」


何度注意してもサーシャはあの花柄のワンピースを脱ごうとはしなかった。


「……そのワンピース、かわいいものね……」


メリッサが褒めるとそうでしょ!と言ってサーシャはくるりと回って見せた。

あんな装備でこの大陸でやっていけるはずがない、なんとかしなければ。そんなことを思っているうちにまた敵とエンカウントしてしまった、この大陸は敵も強い上にエンカウント率も高いのだ、さっきのサソリが3体。メリッサが装備しているロングソードがサソリの体を真っ二つに切り刻む。やればできる子なんだなと思いながら僕のはがねの剣がサソリに突き刺さる。後ろからサーシャがデオラを投げつける。そしてサソリの背中から生えているしっぽがメリッサの体を滅多打ちにしてコロコロと転がっていく。


「メリッサ!」


イリアがすかさず回復魔法を投げる。

メリッサの頑丈な装備でもあの程度のダメージを受けるのだ。

僕も気をとられてる間にサソリのしっぽが背中にダメージを負わせた。


「アレスさん!」


イリアがまたしても薬草を投げつける。またかよ。


「おにいちゃん!後ろに下がって!デオラで一網打尽にするから!」


あやうくデオラに巻き込まれるところだった、僕は薬草を齧りながら引き下がる。

妹のデオラがサソリたちを攻撃すると、戦闘は終息した。


「ふう、ここの魔物たちは随分強いみたいねデオラを3回投げても死ななかったわ」


妹の鼻毛はさすがに凄いことになっていた。デオラを3回も投げたのだ。

僕が笑い出すと何をわらってるの?といぶかしげな表情をして僕の顔を覗き込んだ。

さあ、町へ向かおう。このままでは日が暮れてしまう。


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