第11話

町に来てから半月が過ぎようとしていた。あれからゴールデンスライムは一日2~3匹姿を見せるようになっていた。マイナスになろうかという旅費はなんとか食いつなげるまで回復していたが、それでも色々な不安が残る、ゴールデンスライムは金にはなるのだが経験値が低く、僕らのレベルが止まってしまっていたのだ。


「デアゴオミーラを倒せる経験値が稼げると思ったんだがなあ」


少しは余裕が出てきて酒場でエールやパエリアを頼めるくらいには回復していた旅費を使ってささやかな豪遊をしていた僕らはぼやきながら溜息をついた。このままではらちがあかない。


「馬小屋生活にはならずにすんだけど、いっこうに強くなった気がしないね」


妹がエールをぐびっと飲むと、ぷはあと言ってガラスのグラスをどんと机に置いた。襤褸机がずしりと傾く、酒場の経営が不安である。


「サーシャさん、ゴールデン狩りを一旦中止して元の町に戻ってモンキー狩りをまた始めたらどうなのかと思うのですよ僕は」


イリアが酔っ払いながらいつになく饒舌になった口調で物を言う。モンキーとは以前いた町の周辺にいるマタコンガという名の恐ろしい猿のモンスターのことである。

この猿はなかなか手強い、経験値は多く入るモンスターなのだがこの猿の毛皮にはほとんど値段がつかない。つまりこいつのせいで貧乏なのである。見入りが悪いためにハンターたちもほとんど手をつけず、遭遇する確率が高く、しかも鎧や剣を破壊したりもするため酒場の買い手もほとんど無視している状態なのである。


「あいつと戦うためにもゴールデンをしばらく狩らなければならないな」


何度も防具を破壊されたため、それまで貯めた貯金をほとんど使い切ってしまった僕らが戻るはめになり、こうしてゴールデンを狩り続けるのもそのせいである。にくし、マタコンガ状態なのである。


「マタコンガめ!」


僕は酔いのせいもあってかいつになくイライラしていた。妹のことをつい言い出しそうになりそうでもあった、しかしそのあたりは正気で、自分があまり暴れださないことを少しだけ呪ったりもしながらその場は終息した。マタコンガと戦うためにもゴールデン狩りを延々と続けなければならない。このつまらないゴールデン狩りをいつまで続けなければならないのかまだわからなかった、しかし旅費はだんだん溜まっていく、半月もする頃にはちょっとした商売ができるのではないかと思われるくらいには旅費はたまっていた。


「お兄ちゃん、そろそろ戻る?」


単調なゴールデン狩りを一旦やめて引き返そうという妹の提案であった。


「僕もそろそろ飽きたところです、ちょっと不安ですがマタコンガを狩りにでましょう」


イリアも同意見である。

僕としてはまだまだ旅費を稼ぎたいところであったが二人が言うなら猿狩りに再び戻ることにしようかなと思ったところであった。しかし驚くようなニュースが飛び込んできたのは。


デアゴオミーラ姿を消す


この地域のモンスターを統治する小ボスデアゴオミーラを倒すための旅費稼ぎだったのに、そのモンスターが雲散霧消してしまったというニュースが飛び込んできたのはまもなくのことであった。



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