プロジェクトz

落花生

第1話プロローグ~始まりの殺害~

隊長Zがその部屋を見たとき、血があたり一面に飛びちっていた。死体がないのは、すでに回収してラボへと運ばれたからである。

 友人が死んだ部屋は、彼の仕事部屋であった。最先端の機材がならび、塵一つないほどに磨き上げられているのに部屋は血で穢れてしまっている。その血の量は、戦闘員ではない友人――博士Bが流したものとは思えないほどに多い。

 隊長Zは博士Bが死ぬ直前まで触れていた機械に触れる。キーボードには血がべったりと付いており、そのおかげで死ぬ間際に彼が残そうとしたメッセージが読み取れた。

「大嫌い」

 ダイニングメッセージとしては、いささか可笑しい言葉である。博士Bは刺殺されたとのことであったが、その相手を刺すのに「大嫌い」という言葉はあまりヒントにならない。第一に、彼は自分を殺した相手のヒントを残すようなタイプの人間ではない。彼ならば、もっと合理的なことをするはずだ。すなわち、この言葉にも別の意味があるはずなのである。

 この言葉はなんなのだろうか。

 真相を確かめるために、隊長Zは機械の電源を入れてデータを探っていく。博士Bの生前最後の仕事は把握している。彼は少子化問題の打開策を研究していたはずである。

「どうして……私に娘がいることになっているんだい?」

 隊長Zは、機械の前で固まった。

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