タネガシマ・ジャーナル#02 各イクサ・フレームの見分け方

「センパイ! ヤマムラ・ナギサ=センパイ!」

「アッ、ニシジマ・ジャック=サン! イクサ・フレーム・コラム、評判いいみたいじゃない。課長も『やや物足りないが、初心者にはちょうどいいかも知れぬ……』と言ってたわよ。ところで、私が貸した『機動武者エイジア』のヴィデオグラムは観たかしら?」

「観てます。というか、今回の相談はその件なんですよセンパイ。実は……イクサ・フレームが未だに見分けられないんです!」 

「あーだと思ってたわー。一体どれがわからないの?」

「エート……〈エイジア〉はわかります」

「全部ってことね……」

「各回ごとなら色で辛うじてわかるんですけど、砂漠仕様とか夜間仕様とか出されたらもうお手上げです。どうにかなりませんか?」「じゃあ、各工房ごとの特色をイクサ・フレームと一緒に並べていくわね」

 

   ・アマクニ工房    ・エイマス/エイジア     ・複眼

   ・ミイケ工房      ・テンペスト        ・ツインアイ

   ・ナガソネ工房    ・アイアン         ・モノアイ

   ・カゲミツ工房     ・ワイアーム        ・扁平な頭部

   ・スケヒロ工房     ・グレイブ         ・ゴーグル


「こんな感じかしら」

「ヘェー。複眼って、虫の眼ですよね? 多数の小さな目が集まって出来てるっていう。昔から虫の視界がどうなってるのか、僕わからなかったんですけど」

「そうよねー。でも、理解する必要はないのよ。人間の脳と昆虫の脳では全然違うんだし。ところでニシジマ=サン。イクサ・フレームの電脳が何で出来てるか知ってる?」

「バイオイルカの脳でしたよね。僕、『エイジア』を観るまで知りませんでしたよ」

「大抵の子供たちはそうだったわ。まあそれは措いておいて、アマクニ系の頭部を使う場合、複眼処理のために専用のプログラムを入力することが必要なのよ。手間が煩雑だけど、〈エイマス〉のヘッドは情報処理能力に優れていると言われるわ」 

「アッ、でも〈エイジア〉はツインアイですよね? 〈テンペスト〉っぽい感じの」

「あれは複眼をツインアイっぽくしてるのよ。『機動武者』でも〈エイジア〉のアップの作画で、時々ハニカム構造が見える演出がされてるでしょ?」

「確かにありますね。メーカーごとのこの違いに、利点とかあるんですか?」

「多少はあるらしいけど誤差と言われてるわね」

「誤差」

「私の知り合いの元大尉は『昔はあったんだろうけど今は技術が進歩して大した差はない』と言っていたわ」

「元大尉ですか……」

「あと、『機動武者』では、運用する騎体の陣営が決まってたりするわ。〈エイマス〉や〈テンペスト〉は東(トクガ)側、〈ワイアーム〉や〈グレイブ〉は西(トヨミ)側。〈アイアン〉は両陣営で使われてるからわかりにくいけど……」

「そうなんですかー、ヘェー」

「タネガシマ社やなくなった工房など、色々教えておきたいこともあるんだけど、今日はこのあたりにしておくわね」

「あれ? どこか行くんですか、ナギサ=センパイ?」

「ええ。元大尉とアポイントがあるからね。この時間だと結構ギリギリなのよ。じゃあ明日ね」

「明日って……その元大尉って誰なんですか!? あと、食事の約束は!?」


                ……タネガシマ・ジャーナル#03に続く……

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