第10話 恋の行方

 ここは渋谷高校。

「楽子。俺と付き合ってください。」

 公言通り代官山男は猿野楽子に愛の告白をしていた。

「ごめんなさい。私には彼氏がいるの。」

 楽子には彼氏がいた。

「ガーン!?」

 山男は木っ端微塵にフラれた。

「彼氏って誰だよ?」

「アンディ。」

「アンディ!? あいつは教師だろう!?」

 ニックネームがアンディ。本名は、もう忘れた。

「それでもアンディが好きなの。」

「ガーン!?」

 十代の恋などは愛ではなく、突発的な事故なので、先に襲った者勝ちである。

「クソ! 教育委員会に訴えてやる!」

 山男は負け惜しみを言うしかできなかった。

「ああ、誰か教えておいてあげればよかったのに。」

「あんたが一番面白がっていたでしょ。」

「私は他人の恋愛には興味ありません。」

「私、誰かが告白してるとこ初めて見た。」

「ドキ子もドキドキした。ドキ。」

 栞たちは山男が楽子にフラれるのを楽しく見物していた。

「みんな! 今度は女子の団体戦と谷子ちゃんの個人戦よ!」

「おお!」

「なんで私が個人戦?」

 渋谷高校剣道部が一致団結する中で、谷子一人戸惑うのであった。

「楽子、アンディと部室でイチャイチャしないでよ。」

「大丈夫、アンディの自宅で同棲してるから。」

 今時の教師と女子高生の恋愛は進んでいる。

「ゆ、許せん! 各テレビ局に、新聞社、SNSに全てに写真入りで情報を流してやる!」

 山男は楽子を奪われたので、アンディに対する復讐の炎が燃えている。

「じゃあ、みんな、剣道着に着替えて練習するわよ!」

「おお!」

「山男、覗くと変態って、呼ぶわよ!」

「く、悔しい!」

 こうして高校剣道女子大会に向けて渋谷高校剣道部は練習を始める。

「ダムダムダム。一本決めるわよ!」

「おお!」

「死ぬ気で止めるわよ!」

「おお!」

 なぜか渋谷高校剣道部はバスケットボールをしている。

「ファール、渋井谷子。楽子、フリースロー。」

「やったー!」

「こらー!? いかさま審判!」

「審判への暴言は退場処分にするぞ!」

 山男は審判をしている。

「こらー!? おまえたち! 剣道の稽古もしないで、なぜバスケをして遊んでいるんだ!」

 そこに二人の男の子が現れる。

「おまえは広尾高校の広井修!? ともう一人。」

「こいつは鉢山高校の鉢井歩太。」

「みんなポッターて呼ぶけどね。初めまして、よろしく。」

「お久しぶりです。エク。」

 なぜか現れた男二人と血の妖精エクレアが現れた。

「おまえたち、何しにやってきた!? 俺に負けた仕返しか!?」

「誰がおまえなんかに仕返しするか!?」

 修は気を取り直して冷静になる。

「俺たちは渋谷区代表の男子団体戦のメンバーに選ばれた。もちろん、おまえもだ。」

「よろしくですー。」

 個人戦で優勝した山男も渋谷区の団体戦メンバーに選ばれた。

「あれ? でも使い魔兼家族はエクレアさんだけなの? 当然、ポッターって言うぐらいだから、魔法少年なんでしょ?」

「グサッ!? どいつもこいつも名前がポッターていうだけで魔法が使えると思いやがって!? 絶対に許さないぞ!」

 栞の無神経な言葉はポッターの心に刺ささり傷つく。

「こいつは生身の人間だ。ただ剣道が強いだけ。前の大会は女教師とイチャイチャしていて参加しなかっただけだ。」

「どこも教師と生徒の禁断の恋はあるのね。」

「納得するな!」

「私は、楽子。ポッターさん、私たち良いお友達になれる気がする。」

「楽子さん。」

 見つめ合い手を取り合う楽子とポッター。

「やめい! 教育委員会に電話だ!」

 山男は楽子を引き離す。

「ところで、みなさんの使い魔兼家族はどこに行ったんですか? エク。」

「あの子たちなら食堂かプールで遊んでいるんじゃない?」

「わ~い! 私も自由行動大好きです。ちょっと血を吸ってきますね。エク。」

 次回、女子の剣道大会が始める。


つづく。

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