第9話 魔法剣道
ここは代々木の体育館。高校剣道の渋谷区大会の男子個人戦が行われている。
「楽子! 俺の優勝を、おまえに捧げるぜ!」
素人剣道男子の代官山男は決勝戦にまで進んだ。もちろん、栞たち魔法少女のおかげである。
「あれ? 次、決勝戦だったっけ?」
「終わらせないと永遠に続くのよ。ネタが尽きると困るでしょ。」
「大丈夫。今、おみっちゃんにクロワッサンをオーブンで焼かせているから。」
急遽、渋谷高校の代官山男と広尾高校の広井修の試合が決勝戦にしたので、次は準決勝だ! 決勝に進出だ! などという盛り上がりはない。
「私たち、女子は団体戦だけど、個人戦はあるのかな?」
「今日は男子だけよ。女子は来週にしましょう。そうしないと楽子はアンディとイチャイチャしていていないんだから。」
「それでも5人は部員がいるから今日でも団体戦に出場できるわよ。」
ちなみに女子の個人戦は、現状でも栞、泪、結の魔法少女三人の殺し合いがイメージされる。
「女子の個人戦は平等を重んじて、カワイイ怪獣ちゃんに出場してもらいましょうよ。」
「そうね。私たちが試合に出て戦ったら、第三次世界大戦になっちゃうもんね。」
「魔法少女は良い子の見る番組です。」
意外とこう見えても魔法少女は仲良しである。
「それでは渋谷区剣道大会男子個人戦決勝戦を始めます。」
長い続け漢字15字である。
「楽子。おまえのために戦うぜ! 勝ったら告白するんだ!」
こう見えても楽子と山男の魔法のある恋愛モノのはずである。
「相手は魔法少女三人。だが魔法少年として負ける訳にはいかない。」
広井修も魔法少年の意地で勝たなければいけなかった。
「それでは前へ。はじめ!」
遂に高校剣道渋谷区大会男子個人戦決勝が始まった。
「だああああー!」
山男が優勢に竹刀を打ち込んでいく。
「なんだ? こいつの打ち方は? まったくの素人ではないか?」
修は山男が本当に実戦経験の無い素人だと実感した。
「勝てる! 勝てるぞ! 楽子に勝利を!」
調子に乗った山男が攻め続ける。
「おまえ、魔法少女の力だけで、ここまで勝ち進んできたな。剣道に一生懸命打ち込んで青春を捨ててきた者たちを愚弄しよって! 俺が成敗してくれるわ!」
特に魔法も使わずに修が山男の小手を狙い、竹刀を打ち込もうとする。
「シールド発動! ティファ・ティファ・ティファニー!」
修が山男に小手を打ち込んだはずのだが、光の盾が現れて小手を防ぐ。
「なんだと!? 光のシールドだと!?」
修も剣道の試合で盾を見たのは初めてだった。
「言ったはずよ。私がついているんだから山男は負けさせないって。」
結はティーセットでラベンダーティーを飲んでいる。焼きたてのクロワッサンの香ばしい臭いがしている。
「やはり俺の邪魔をするか!? 魔法少女よ!」
修も敵は山男ではなく、魔法少女だと認識した。
「そっちがその気なら、エクレアさん! こっちもやるぞ!」
「はい! 待ってました! エク。」
修の使い魔兼家族の血の妖精エクレアが動き出す。
「合体! 竹刀!」
エクレアは修の竹刀に吸収された。
「完成だ! これが俺のブラッディ・竹刀だ!」
修の竹刀は血のように真っ赤に染まった。
「ブラッディ・竹刀!?」
「そうだ。俺は対戦相手の血を吸って勝つことが出来る。」
「キモッ!」
会場の全員が気分が悪くなった。
「おみっちゃん、よろしく。」
「はい、ティファニー様。」
「おまえの血を吸ってやる!」
「あの私、幽霊なので血がありません。エヘッ。」
「そんなバカな!?」
「コンコン、点火。」
「コン。」
小妖狐のコンコンは青い狐火を修につけた。
「ギャアアア!?」
修は青い炎に包まれて燃える。
「それまで! 優勝は渋谷高校! 代官山男!」
「やったー! 優勝したぞ! 楽子!」
しかし会場に楽子はいなかった。
つづく。
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