第7話 新星、現れる

 ここは代々木の体育館の高校剣道新人戦の会場。

「勝ったぞー! 楽子! あれ? 楽子は?」

 1回戦に勝った山男は栞たちの元にやってきた。

「トイレに行っているのよ。」

 栞は笑顔で嘘をつく。

「そうか。残念だな。」

「それより、次は2回戦でしょう。早く行かないと不戦負になるわよ。負けたら楽子が悲しむわよ。」

「それはいけない! またな!」

 山男は去って行く。

「アホな相手って疲れるわね。でも面白いかも。キャハ。」

「悪いエルメス様が出ていますよ? ワン。」

「現代人は、山男くんとエルメス様、どちらに共感するんでしょうね。ニャア。」

「でも、面白いかも。へっへっへ。ニヤッ。」

 現代人は純粋で無垢より、面白ければ何でもありを選ぶだろう。

「荒んでいるわね。あなたの心。言ってやれ、ヴェルニ。」

「アホ~、アホ~、エルメスのアホ。」

 泪の使い魔、アホガラスのヴェルニ。アホ~しか言わないが人気投票では1位である。

「ルイヴィトン様の第一使い魔の座が!? アホガラスに負けた!?」

「zzz。」

 元第一使い魔の雀のモノグラムはショックを受ける。フクロウのダミエは相変わらず昼間は寝ている。

「でも山男で遊ぶのは朝食後の運動にちょうどいいかも。おみっちゃんモーニングセットを下げてちょうだい。」

「はい。ティファニー様。」

「コン。」

 癒し女幽霊のおみっちゃんと小妖狐のコンコンはお皿や椅子に机を片付ける。

「哀れな山男を優勝させてあげましょう。」

「正々堂々じゃなくていいの?」

「私、既に魔法使ったわよ。」

 栞、泪、結は目と目を見つめ合わせる。

「キャハハハハ!」

 そして、笑った。

「ああ、いつものエルメス様だ。毎回私たちのオープニングだけどいいのかな? ワン。」

「いいのよ。良い子のちびっ子は魔法少女の活躍を期待してるんだから。ニャア。」

 作品の構成とご主人様の栞たちを心配するケーリーとバーキンであった。


「渋谷高校と鉢山高校の試合を始めます。前へ。」

 山男の二試合目が始まろうとしている。

「楽子! 優勝したら、俺と結婚してくれ!」

 山男は知らない。楽子が教師のアンディとイチャイチャしていることを。

「山男、可哀そう。」

 もし山男と楽子が結婚したら処女でない傷モノと結婚することになる。 

「何も知らない方が幸せってこともあるのよね。」

 渋井姉妹も山男に同情する。

「はじめ!」

「でやああああああああ!」

 山男と鉢山高校剣道部員Aの戦いが始まった。序盤は軽い打ち合いである。

「それではそろそろ魔法を使って。」

「ダメよ。エルメスちゃん。今度は私の番よ。」

 魔法を使おうとする栞を泪が遮る。

「山男の剣道着に戦闘機のジェットエンジンを装着、点火! ルイ・ルイ・ルイヴィトン!」

 泪は魔法を唱える。

「うおおおおおー!?」

 山男の剣道着にジェットエンジンが着き、エンジンが点火し急加速する。

「一本! それまで!」

 山男はハイスピードのまま、たまたま相手に胴を打ち込み勝利する。

「ギャアアア!?」

 ドカーン! と山男は壁にぶつかって止まる。

「どんなもんよ。私の実力は。」

「なかなかやるわね!?」

「その前に山男が死んじゃうわよ。私まだ遊んでないのに。」

 栞、泪、結は自己顕示欲の塊で、山男の心配はしていない。

「これって青春恋愛モノなのかな?」

「教師と生徒の禁断の恋もあるからお仕事恋愛モノじゃない? ドキドキ。」

 谷子も困惑する今時のリアル高校生の恋愛である。

「間違いない!? あいつも魔法少年だ!?」

 あり得ない山男の活躍を陰から見つめる剣道着を着た高校生がいた。広尾高校の広井修である。

「シュー、あいつに勝てる?」

 修の使い魔兼家族の血の妖精エクレア。

「なり立ての魔法少年に俺が負けると思う?」

 ここで魔法少年という、アイデアのネ申が舞い降りる。


つづく。

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