第6話 男、新人戦

 ここは代々木の体育館。

「ここよ! ここで一歩踏み出せるかに連載の存続がかかっている!」

「何をやっているんですか? ワン。」

「いつもの独り言だ。ほっとこう。もうすぐ代官山男さんの試合ですよ。ニャア。」

 栞は使い魔兼家族の犬のケーリーと猫のバーキンを引き連れてきた、高校剣道の渋谷区大会。

「なに? 男子は団体戦は廃止なの? 競技人口が少ないのね。」

「お姉ちゃん! こっち! こっち!」

「カワイイ怪獣ちゃん!」

 妹の谷子が栞を呼んでいる。栞はにやけながら谷子に吸い寄せられる。

「もうすぐ山男くんの試合が始まるよ。」

「そうね。あれ? 楽子はいないの。」

 代官山男の高校剣道男子個人戦を見に来たのに、猿野楽子の姿は見えなかった。

「今頃、アンディと渋谷でデート。」

 楽子とアンディは教師と生徒の禁断の愛に進んでしまった。

「可愛そう。山男。」

 ニュースで放送されるヤバイ恋愛だ。


「俺は楽子のために優勝する! 優勝して楽子に好きだと告白するぞ!」

 そうとは知らない山男は燃えていた。


「あんたたちだけ家族を登場させるのは卑怯よ。」

「やっと登場! ルイヴィトン様の家族です! ちゅんちゅん。」

「アホ~、アホ~。」

「zzz。」

 泪の使い魔兼家族の雀のモノグラム、カラスのヴェルニ、フクロウのダミエである。

「おまえが砲身ばかり磨いているのが悪いのだ。」

「肩を揉みますよ。ティファニー様。」

「気が利くな。おみっちゃん。」

「コン。」

 結の使い魔兼家族の癒し女のおみっちゃんと小妖狐のコンコン。

「朝食ばっかり食べてる奴に言われたくないわ!」

「うるさい。黙れ。」

 泪と結は一触即発である。

「相変わらず、仲がいいですね。」

 そこに渋井姉妹が合流する。

「ケンカして試合を中止させないか、ドキドキ。」

 おまけのドキ子もいる。

「あなたたち、恵比寿高校剣道部と試合した時みたいに、恵比寿の街を破壊しないでよ。」

 栞が泪と結に注意を促す。

「はあ!? 壊したのはおまえだろうが!」

「ブラックホール、ビックバーン、土星。次々と恵比寿の街を崩壊させ、与えた損害は10億以上。私たちが魔法少女でなければ許されていません。」

「ははははは。ガク。」

 落ち込む栞。

「お姉ちゃんはわざとやったんじゃないもんね。」

「なんと優しい、我が妹よ!」

 わざとじゃなくても許されません。

「山男の試合が始まるよ。ドキ。」

 使い魔兼家族を7人紹介が終わる。


「渋谷高校と鶯谷町高校の試合を始めます。前へ。」

 遂に山男の楽子に告白するための試合が始まる。

「はじめ!」

 対戦相手の鶯谷町高校剣道部員Aは、初心者の山男より少し強いというくらいの実力だった。

「だああああー!」

 互いに軽い打ち合い。しかし次第に山男は相手に押されてくる。


「なんか、山男の奴、ヤバくない?」

「楽子にフラれて、剣道の試合でも負けて可哀そう。」

「ていうか、山男、楽子とアンディが付き合ってるの知らない。ドキ。」

「山男が勝とうが負けようが、朝食には関係ありません。」

 栞たちは他人事には冷たい。

「栞お姉ちゃん! このままだと山男くんが負けちゃうよ! 助けてあげて!」

 谷子一人だけ田舎に住んでいそうな純粋な心を持った普通の日本人だった。

「はい! 助けます! カワイイ怪獣ちゃんの頼みですもの!」

 姉の栞は、カワイイ妹の谷子の頼み事には弱かった。


「もらった!」

 鶯谷町高校剣道部員Aがとどめの面を取るために竹刀を振りかぶる。

「ワープ! エル・エル・エルメス!」

 栞が魔法を唱える。

「消えた!?」

 山男の姿が消えて、鶯谷町高校剣道部員Aの竹刀を避ける。

「もらった!」

 山男は相手の後ろに現れて、背後から面を打った。

「一本! それまで。」

「やったー! 俺の勝ちだ! 見てくれたか! 楽子!」

 その頃、楽子はアンディとイチャイチャしている。

 

「全て私のおかげね。エヘッ。」

 栞は由緒正しき魔法少女である。


つづく。

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