第3話 初陣
ここは恵比寿高校。
「よろしくお願い致します。」
私たち渋谷高校剣道部は練習試合のため、恵比寿高校剣道部の稽古場にやってきた。
「寿先生、今日はありがとうございます。」
恵比寿高校剣道部顧問、寿先生。恵は恵三姉妹の名字、比はフィリピンで使ってしまったからだ。
「うわあ!? すごい!? 剣道部の稽古場って感じ!?」
「あなたがほんのおねえさんのポスターを貼りまくるからでしょ。」
恵比寿高校剣道部の稽古場は質素だった。
「騒がしいわね。」
「どうして上位常連の私たちが新設の剣道部と試合なんかしないといけないんですか?」
「撮影が忙しいから、本当に勘弁してって感じ。キャハハハハ!」
そこにきれいなモデルさん体型の三人が現れた。
「なに!? こいつらは!?」
「あれが恵三姉妹だ!」
「なんですって!?」
現れたきれいなお姉さんたちは今日の対戦相手の主力、恵三姉妹だった。
「サイン下さい。」
アンディはサイン色紙を恵三姉妹に差し出す。
「こら! アンディ! 渋谷高校剣道部の顧問としてのプライドは無いのか!」
「ない!」
敵に魂を売るアンディ。
「こっちに来い! 敵とじゃれるな!」
「許してください!? ギャアアア!?」
引きずられるアンディ。
「寿先生、あんな奴らとの試合に私たちが出る必要があるんですか?」
「そういうな、新人戦に向けての景気づけとでも思ってくれ。実戦の感覚を取り戻すつもりで気楽に可愛がってやれ。」
「要するにパンダさんとキリンさんってことですね。」
「は~い。軽く遊んであげましょう。」
恵比寿高校剣道部は絶対の自信があった。恵三姉妹の個人での成績も全員ベスト8以内のトップ選手。そして三姉妹ということで団体戦も、まず3勝は確実であった。
「渋谷高校剣道部! ファイト!」
「おお!」
渋谷高校剣道部の部員たちは円陣を組んだ。
「勝って、恵比寿ガーデンプレイスで遊ぶんだ!」
「私は食パンを買って帰るのよ!」
「夜のライトアップがキレイんだって!」
「ロブションで特別にモーニングできるように手を回したから、1時間でケリを着けるわよ!」
「谷子ちゃん、みんな、ドキドキしてるね。」
「私は別に。」
「絶対に勝つぞ!」
「おお!」
俄然、盛り上がる渋谷高校剣道部。
「先鋒! 前へ!」
「はい!」
渋谷高校剣道部の先鋒は楽子。剣道着を身に着け面を被り清廉された姿で戦いに望む。
「がんばれ! 楽子!」
代官山男も大好きな楽子を応援にやって来ていた。
「あなたが相手? 私の相手が何秒務まるかしら?」
楽子の相手は、恵三姉妹の長女ラブリー。
「負けるもんですか! 私の初めての試合なんだから!」
「はじめ!」
楽子とラブリーの先鋒戦が始まった。
「一本!」
「え?」
「話にもならないわ。」
楽子は何もしないまま、面に一撃を打たれ負けた。
「ごめんごめん。負けちゃった。あはは。ガク。」
「次は谷子ちゃんの番ね。」
「どうして!? 私が!?」
なぜか試合に出される谷子。
「次鋒、前へ!」
「うわあ!? うわあ!?」
「震えてるの? 勘弁してよね。」
恵比寿高校剣道部の次鋒は次女恵メアリーだった。
「はじめ!」
谷子とメアリーの戦いが始まった。
「一本!」
「うわあ!?」
「もう終わったから黙れ。」
メアリーは谷子にチョンっと胴を決めた。こちらも瞬殺だった。
「負けちゃった。ごめんなさい。」
「ドンマイ! 次は練習して勝とうね!」
楽子は部長として谷子を励ます。
「ユウリ、午後から撮影があるから、瞬殺で決めるのよ!」
「分かってるってお姉ちゃん。」
恵比寿高校剣道部の中堅は三女ユウリー。
「誰を瞬殺するですって?」
「はあ?」
「私のカワイイ怪獣ちゃんをいじめたことは許されない。死をもって償うがいい。」
栞は燃えていた。渋谷高校剣道部の中堅は谷子の姉の栞だった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。