第10話 ゴコクハンターズ

車はヘッドライトを消した。地平線の向こうが、薄ぼんやりと明るくなっている。

無音モードの車は、速度を落として近づいていった。

「あれ…」

「うん、セルリアンだね」

ライトアップされた建物はなにか荘厳な佇まいで、その周りには大型のセルリアンが何体もいるようだ。

「セルリアンの巣なのだ。いくらアライさんたちが無敵の布陣でも、戦って勝てる相手じゃないのだ」

「でも、きっとここにはかばんちゃんがいて、わたしたちが来るのを待ってる」

オープンカーは、そろそろと闇だまりを伝うように移動する。

「見て。確かに大きなセルリアンはいるけど、隙間がけっこうあるねー」

大型セルリアンと大型セルリアンとの間には距離があり、間隙を突けば突破できるかもしれない。

「だめダヨフェネック。小型セルリアンも沢山イルヨ」

ラッキービーストが電子の目で状況を確認する。

「ミンナ、降りテ」

「え?」

「ボクが車でセルリアンをおびき寄せるカラ、その隙に建物の中に入っテ」

「だめだよボス!そんなことしたら、またボスが壊れちゃう!」

サーバルが即座に反対した。

「イインダ、サーバル。かばんヲ頼ム」

ラッキービーストが車のライトを点けようとした時、鬨の声が上がった。

うぉうおううおおおん

ごおおああん

ぴいいいいい

それは、何人ものフレンズたちの雄叫び。それを合図に、砂塵を巻き上げて走っていく。

「フレンズ?」

サーバルが振り返ると、走り来るフレンズには、見覚えのある姿もあった。

「待った、サーバル!ここは任せて!」

「ニホンオオカミ!」

「タイリクお姉様の仲間だった、ハンターたちを連れてきたよ!」

既にハンターたちはそれぞれの武器を手に、小型セルリアンを屠っている。

「大型が…4体か。ちょっとキツいな」

言葉とは裏腹に、見るからに豪腕のフレンズは、舌舐めずりしながらニヤリと笑う。

「うおおおおお!」

作戦も何もない。手当たり次第に爪を、牙を、突き立てるだけだ。だが、セルリアンたちは動揺したようにも見える。

「サーバル、早く乗っテ」

車は砂の旅団が作った隙間に飛び込む。

「あそこが開いてる!」

サーバルが指差す先には、車が余裕で入れる開口部がある。ラッキービーストは車を階段下に停めた。

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