第7話 セルリアン

その一部始終を見ている者がいた。

それはフレンズではない。セルリアンのようでもあるが、フレンズと同じ姿をしている。

傍の中型セルリアンに、何か指示を与えたようにも見えた。

紙飛行機が砂に落ちると、あたりは真っ暗になった。

それまで紙飛行機に気を取られていたセルリアンたちは一斉に動き出し、一つ目がぎょろりとかばんを見る。

「かばんさん!」

ダチョウが駆けつけようとするが、間に合わなかった。


(ああ、ここは…)

それは覚えのある感覚だった。上下がわからなくなり、音も消失し、時間さえも失われる。

(また、食べられちゃったんだな、ぼくは)

ただ違うのは、身体を動かせる感覚があることだ。それから、小刻みな振動が、移動していることを伝えてくる。

(どこに行くんだろう)

不安はなかった。どれほどの時間が経ったのかわからないが、振動が緩やかな揺れに変わり、終点が近いことを教える。

ズズッ。

身体が沈み込む感覚があり、かばんは地面に横たえられた。

「ここは…」

薄く目を開けると、薄暗い中にも明かりのある、大きな空間だった。

天井は高く、大型のセルリアンでも余裕がありそうだ。

「っつ!」

突然、かばんを頭痛が襲う。生を受けて初めての痛みに、かばんは戸惑った。

アアアアアアア

ズズズズズ

ママママママママ

ナナナナナナナナナナ

それは声、のようにも聞こえる唸り。かばんは声の方へ向き直る。

…スマナイ

声は頭の中に響く。頭痛が酷くなり、かばんは頭を押さえる。

「すまない」

今度は声として、耳から聞こえた。声の主はフレンズのようだが、かばんは違和感を覚えていた。

「言語、を君に合わせた。ヒトの子よ」

「あなたは?」

「わたしは、君たちが言うところの、セルリアンだ。いや、もはやセルリアンとも違う存在かもしれないが」

雲が切れ、月明かりがセルリアンの顔に光を落とす。それは、かばんが息を呑むほどに美しく。その腕の中には、何か小さなものが息づいていた。

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