第5話 ナワバリのありか
「修理は、完了しました」
ラッキービーストが、かばんに告げる。
「直ったよ、ありがとう」
ラッキービーストが顔を出す。ボディにはわずかな凹みが残っている。
「そうですか、よかった…だけど…どうにかしなきゃ…」
かばんはフラフラと建物を出ると、街の外れに出た。夜の帳が、そろそろと降りようとしている。
「かばんちゃん!」
サーバルとラッキービーストが追いかけてきた。
「待って、サーバルちゃん。今考えてるから。サーバルちゃんたちだけでも、キョウシュウエリアに帰してあげないと…」
「かばんちゃん!かばんちゃん!」
「待ってって!」
かばんは思わず声を荒げ、そのことに自分で驚いた。サーバルはきっと、悲しい顔をしているだろう。もしかしたら、驚いて涙が出ているかもしれない。かばんは、サーバルの顔を見ることができなかった。
「ごめんね、サーバルちゃん。サーバルちゃんたちのこととか、ニホンオオカミさんのこととか考えてたら…いったいぼくに、何ができるんだろう」
俯いたかばんの首に、ふわりとサーバルの腕が回された。
「大丈夫だよ、かばんちゃんは、なんだってできる。私の大好きな友達のかばんちゃんは、すっごいんだから」
サーバルの声は優しく、かばんの胸に染み入る。サーバルといるだけで、本当になんだってできそうな気がしてくるから不思議だ、とかばんは思う。
「それにね、わたしはかばんちゃんが一緒だったら、キョウシュウエリアに、サバンナに帰れなくたっていいよ。だって、かばんちゃんのいるところが、わたしの縄張りだから」
思わずかばんは振り返るが、サーバルはさっと手を離すと、向こうを向いてしまった。それでもかばんにはわかる。サーバルが、きっと今、自分と同じ表情をしていることが。
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