底辺絵師が神絵師になる方法
底辺絵師が神絵師になる方法
この世は何だってエネルギーで出来ている。
電気、ガス、水道が無きゃ生活に慣れきった人間が生きていくのは困難だし、生き物に至っては、食事という他の生き物や植物を取り込んでエネルギーを得ている。
そう、とにかくエネルギーエネルギーエネルギー。
エネルギーが必要だ。
毎日のようにエネルギーを取り込んでいたのに、食べるという事はエネルギーの摂取だと、僕はこの時初めて考えついた。エネルギーの摂取は直接的な自分の活動を維持するものでしかない。
ライオンを食べたからと言ってライオンのような強さが身につくわけでもないし、魚を食べたからと言ってエラ呼吸が出来るようになるわけでも無い。至ってシンプル、理由は食事自体が能力の継承では無いからだ。
だから、失敗した。
目の前には動かなくなった尊敬する人。だったもの。あなたの考え方が好きだった、あなたの描くビジョンが好きだった、あなたの語る世界が好きだった、あなたのすべてを僕も身につけたかった。どう真似をしても真似にしかならない、どうすればあなたのようになれるのかとずっと考えていた。あるときひらめいた、あなたを自分の中に取り込めばいいんじゃないかと。あなたの血肉があなたであるように、その血肉を取り込んだ僕もまたあなたになれるのではないかと。
僕のいいところは有言実行するところだとあなたは言ってくれた。僕は自分のそんな部分に惹かれもしなかったけれど、あなたはいつもそう褒めてくれた。だから実行した。あなたになりたかったから、あなたの肉をちぎり、流れ出る血を飲み干し、大事に大事に租借した。
だけれど一向に僕はあなたにならなかった。
その時初めて僕は、食べるという行為はエネルギーの摂取だと思い至ったんだ。どんなに食べてもあなたにならない、どころか体の中に取り込んだあなたの血肉は、いつか排泄物として体から出て行ってしまう。血肉となって体を巡っていても新陳代謝を続けていれば、いつかあなたという細胞の残りはすべて消えていってしまう、あなたはいなくなってしまう、あなたになれなかった僕は、あなたまでいつか失ってしまうのか。
「ああ、ならばせめて」
僕の体が死亡すればあなたの血肉が消化され排泄物として出る事も無く、新陳代謝として僕の中から出ていく事も無い、あなたが消えない。あなたがのこせる。なら、僕が死ねばいいわけだ。
簡単な結論だった、善は急げ、有言実行、あの人へ突き立てたナイフを僕の心臓に突き立てれば おわ り
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