0章 ゲームオーバーそしてゲームスタート

バッドエンドin夏休み

「……」「……zzz」一人の少年がベッドで寝ている。

「……きて……さい」女の子の声が、響いている。身長は、152cmくらいだろうか、髪は、金髪のツインテール、目は、宝石の様に透き通った水色。「起きて下さい!兄さん!」

「…んz……あと5分だけ…」少年は、すっかり寝ぼけているようだ。「今何時だと思ってるんですか!?このままだと電車に乗り遅れますよ!」女の子の声叫び声が少年の部屋中に響き渡る。「…電車って…今日は、何かあったけ?…」と寝ぼけた様子の少年は、ベッドのすぐ横に置いてあったカレンダーを見る。カレンダーの8月10日、つまり今日の日付の箇所には、ペンで大きく書かれた「即売会」の文字があった。

「ンナ!!??」少年は、慌てた様子で、飛び起きた。「やっと起きましたか…飛鳥兄さん」

少年の名は、風達 飛鳥(かぜたち あすか)都内の高校に通う、高校一年生である。

身長は、164cm、髪は、やや茶色がかった黒で、少々長いのか後ろ髪を結んでいる。

瞳の色は、女の子と対称的で、黒である。

先程まで、起こそうとしていた金髪ツインテの女の子は、飛鳥の妹の志保(しほ)である。

今日は、二人で、同人誌の即売会のイベントに参加するために、電車の時間も計算して、早く起きる予定だったのだが……

「ヤバい!どしよ!?志保?」

「どうするもこうするも、私は何度も、起こしましたが…ハァー…もういいです!朝食は、もうできてるので、早く支度済ませてください!」

「さすが、俺の妹だぜ!」調子がイイとはまさにこの事である。だが、

「早くして下さい!」

当然、飛鳥は、ただ志保の、怒りを買っただけである。

朝食を済ませた飛鳥は、部屋に戻り、急いで外出用の服に着替えた。そして、必要な物を鞄に入れて確認する。「財布もった、

スマホ持った。色紙とペン持った。このパスは、まだ…有効期限は、セーフ…よし!行くか!」支度を済ませた彼は、志保が待っているであろう、玄関に急いで向かおうとした、

「と!その前に…」飛鳥は、自分の机の上に置いてある、写真の前に立ち「母さん。行ってきます!」と言って。再び玄関を目指した。

玄関に着くと、予想通り志保が待っていた。

「遅いですよ!」

「だから、悪かったって……」

「まぁ…いいです。早く行きましょう」

「だな!」

二人は、家を出た。

街は、どこもかしこも、夏休みを過ごす学生で溢れかえっていた。

「うわぁー……皆さん運動は?……」

ボソボソと、小言で飛鳥が言うと。

「その言葉、私達にも、跳ね返って来ますよ」

志保の正論に飛鳥は、返す言葉もない…

二人は無事駅に着き、目的の電車にも間に合った。

電車の中で、「そういえば、家で兄さん、1度廊下出た後一旦部屋に戻りましたよね。

準備は、もう出来てた様子なのに…」

志保が聞いてきた。おそらく、飛鳥が母親の写真に、挨拶していた事であろう。

しかし、飛鳥は、「あぁ…あれね。部屋のエアコン付けっぱなしだったから、消してきたんだ」

「そうだったんですか?全く……気を付けてくださいよ…」

「あぁ今度からは、気を付けるよ」

(危なかった……やっぱり、もう、そろそろ話したっていいんじゃないか…いや、やっぱ無理だ。またあんなことになったら……)

というのも、元々、志保は、飛鳥の父親の再婚相手である、母親の連れ子であった。

母は、病弱で、飛鳥の父と、当時12歳だった飛鳥が、看病していた。そんな、母は、とても優しく、特に志保は、母親の事が、大好きであった。

しかし、飛鳥が、中学3年生、志保が中学1年生の時に、母は、容態が急変し、この世を、去ってしまった。

その時だった。志保は、ショックから、精神を崩壊、一時期、言葉が、話せなくなる、失語症になってしまった。中学にも当然、通えなくなってしまった。

父は、海外での、仕事が、多く入り、家を出たきりである。志保の事を任された飛鳥も自責の念から、引きこもりとなってしまった。

その後、志保の精神が、安定し、飛鳥も立ち直ることができた。回復した時期も早く、不登校とはいえ、参考書やデジタル教材を使って、勉強は行っていたため、学力のガタ落ちは避けることができ、都内の高校にも無事、入学できた。

だからこそ、取り戻したこの日々を失うまいと、飛鳥は、母の事は志保に話さないことにしている。

「そろそろかな…」

「では、行きましょう!兄さん」

普段より、テンションが高い志保に驚きつつも、「だな!」と答えた。

イベント会場は、多くの人で、溢れていた。

様々なサークルの同人誌、多くの企業のアニメグッズ、さらには、特設ステージでの、イベント限定ライブなど、二人は、イベントを遊び尽くした。

イベントも終わり、二人は、駅に、向かった。

「でも、夢みたいです!まさかこのイベントに、参加できる日が来るなんて!兄さんのおかげです!」

志保の突然の言葉に飛鳥は、少し照れながら

「そんな、ことないって…俺も行きたかっただけだし。たまたま、三日前がバイトの給料日だったからな…」

「それでも!私は、兄さんのおかげと思っています!兄さん、本当にありがとうございます!」

彼女の言葉に、飛鳥の照れは、増していった

「さっ、さて!でっって電車に乗るぞ」

「そうですね。行きましょう。」

二人は、電車に乗った。

帰りもイベントの話で持ちきりだ、もうすぐ

二人の降りる駅が見えてきたところで突然、

電車が大きく揺れた。どうやら、何か不備があったらしい。しかし、事態は、最悪の展開に悪化した。突然、先程通っていたトンネルの天井が崩れ落ち、電車に直撃した。

勿論、客にも、多大な影響があった。

そして、丁度、飛鳥と志保が乗っていた車両に瓦礫が直撃したのである。二人は、下敷きとなってしまった。この瞬間、二人の人生は、終わりを告げてしまったのである。

「もう、ゲームオーバーかよ……これじゃバッドエンドじゃねぇか……せめて、生まれ変わってでも、あいつを守らねぇと……」







「……その願い聞き入れた……」

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