3-22 エムゼタシンテ・ダンジョン2階層
階層ボスとして現れたゴブリンの群れを倒したあと、連中が現れたあたりの地面が淡く光っていた。
「お、これは……」
近づくと、そこには転移陣があった。
「さて、続けて2階層も行っちゃいますか!」
転移陣を踏むと、一瞬で景色が変わる。
さっきまで開けた広場にいたのに、また薄暗い森になった。
ここもやはりランダムな場所へ飛ばされるので、周りの景色や木々の生え方なんかの特徴から転移先を割り出す。
「うわー、ボスエリアからだいぶ離れてんなぁ」
この階層も1階層と同じく森林ゾーンなのだが、どうやらボスエリアから一番遠い場所に転移されたらしい。
マップを頼りにボスエリアを目指す。
ここの出現モンスターは1階層とあまり変わらないのだが、グレイウルフが最大3匹の群れで出るのと、ゴブリン系のモンスターが出現するようになる。
ゴブリン系といっても、さっきの階層ボスより弱めで、落とす魔石もひと回りほど小さい。
Eランク冒険者が苦労するレベルではないのだが、Fランクのみで結成された、連携のつたない3~4人のパーティーだと、ちょっと苦戦することもあるんだとか。
「ま、この階層も楽勝だな」
順調に魔石を集めつつボスエリアに到着。
魔石は箱の6割を超えたかなって感じだ。
途中〈気配察知〉に引っかかったやつを片っ端から仕留めていったから、結構時間かかったけどね。
ボスエリアの待ちはなかったので、そのまま突入。
1階層と同じようなエリアに、今度は6匹のゴブリンが現れる。
所持武器からして、ゴブリンセイバー、ゴブリンランサー、ゴブリンアタッカー、ゴブリンアーチャー、杖持ってんのはゴブリンメイジかヒーラーってことか。
残る1匹はひと回り体が大きいので、たぶんホブゴブリンだな。
棍棒持ってるからホブゴブリンアタッカーってとこか。
杖のゴブリンが、こちらに向けて火の玉を飛ばしてくる。
ってことはこいつ、ゴブリンメイジだな。
「
火の玉がゆっくり飛んで来きてるんだけど、こんなの食らうやついるの?
もしかして軌道変更できるんだろうか? と思って軌道から離れてみたけど、火の玉はそのまま誰も居ないところをゆっくりと飛んでいき、ボスエリアの境界となっている草の壁に当たって消えた。
俺が火の玉をかわすのを見計らってアーチャーが矢を放ってきたが、そんなもんは察知済みなので、さらに跳んで射線から離れ、《魔弾》で仕留める。
メイジはあれ、放っといてもいいだろ。
そうこうしているうちに、群れの前衛どもが近づいてきた。
まず最初にたどり着いたのがゴブリンアタッカーで、その後ろにランサーが控えている。
どうやら連携しているらしく、棍棒を振り上げたアタッカーの左側から俺を槍で突こうとしているらしい。
「反対に跳んだら狙えなくね?」
アタッカーが振り下ろす棍棒を、そいつ自身の身体でランサーの死角に入るようにかわし、棍棒を振り下ろして隙だらけの喉をプスリ。
ランサーを避けて跳んだんだが、どうやらそれはそれで狙っていたようで、背後からセイバーが襲ってくる。
「残念」
そいつが構えた剣を振るより早く《魔弾》がセイバーの眉間を撃ちぬく。
次の瞬間、消滅しつつあるアタッカー影からランサーの槍が襲いかかってきたので、半身を翻してかわし、そのまま踏み込んで喉をひと突き。
攻撃直後のスキを狙ったかのように、リーダーと思しきホブゴブリンが棍棒を振り下ろそうとしたが、その寸前、顔面めがけてギリギリ詠唱が間に合った《魔矢》を発射。
さすが上位種だけあって危険を察知したのか、顔をのけぞらせたものの、残念ながら間に合わず、《魔矢》はホブゴブリンの鼻から左目あたりをえぐりとった。
そこへゴブリンメイジから放たれた本日2発目の火の玉が到着。
ホブゴブリンから距離を取るかたちで、余裕を持って避ける。
うん、メイジはやっぱ後回しでいい。
「グゲギャ……ガガ!!」
と、わけのわからんうめき声を上げながら、怒りに燃えるホブゴブリン。
闘志を込めた残りの片目で俺をにらんでるけど、ごめん、君はもう詰んでます。
〈無魔術〉ばかりじゃ芸がないと思い、ちょっと距離をとって詠唱してたんだよね。
てなわけで、ようやく体勢が整ったホブゴブリンに向けて《雷球》発射!
《弾》ほどではないにしろ、かなりの速度でホブゴブリンの胸のあたりを捉える光の玉。
「グゲェアァッ……」
バレーボール大の《雷球》が当たった瞬間、ホブゴブ君は10mくらい後ろにふっ飛んだ。
「おお、なかなかの威力」
見た感じ《雷球》がぶつかった衝撃というより、纏っている雷撃にふっ飛ばされたのかな。
ホブゴブリンは地面に倒れてしばらく痙攣して、すぐ消滅した。
最後に残ったメイジをみると、ちょうど本日3発目の火の玉を飛ばしていた。
せっかくなので《氷球》をぶつけてみる。
ゆっくり飛んできていた火の玉と俺の飛ばした氷の塊の軌道が重なる。
――ジュッ……。
情けない音を残して火の玉は消え、勢いの衰えない《氷球》がゴブリンメイジの胸のあたりに命中。
「ギャギ……ッ……」
上半身をピキピキっと凍らせたあと、ゴブリンメイジは消滅した。
魔石を回収したあと、例の如く現れた転移陣に乗ると、ダンジョンカードから警告音が鳴る。
《階層制限のため先へ進めません。入口へ戻る場合はそのまま転移陣の上でお待ち下さい》
というメッセージがカードの表面を流れる。
よし、一度入り口まで戻るとするか。
10秒ほど転移陣の上で待機していたら、景色が変わった。
たどり着いた先は、最初に乗った転移陣の広場の、ちょっと外れたところかな。
ダンジョンの中は昼だったけど、外はもう日が暮れてるんだなぁ。
《出口はこちら》
という案内板を頼りに砦を出た。
帰還玉は回収ボックスがあったから、そこに入れておく。
バカがクスねて罰金とられる、なんてことが結構あるらしい。
高性能なダンジョンカードってのがあるんだから、すぐバレるってのはちょっと頭働かせれば分かりそうなもんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます