3-23 初めてのダンジョン探索を終えて
砦を出た俺は、まずギルドの買い取り所に向かう。
ここは魔術師ギルドと冒険者ギルドが共同で出している所で、魔石とドロップアイテムの両方を買い取ってくれる。
まだギリギリ営業中だったので、7割ほどが魔石で埋まっている箱を収納庫から取り出して、受付台に載せた。
「買い取りお願いします」
「はいよ」
買い取り所には、ローブを着崩した無精髭のくたびれたオッサンが座っていた。
「ああー、10kgないねぇ」
オッサンはブツブツ言いながら計量機能付きの箱に魔石を移し替える。
「6.8……68Gね」
ってことは1kg10Gか。
2階層あたりで魔石集めするんなら、薬草採取のほうが断然効率はいいな。
その他にいくつかドロップアイテムもあったので、合わせて買い取ってもらう。
合計147Gになったので、現金でもらっておいた。
この集落、カード払い出来るところが意外と少ないんでね。
ドロップアイテムを含めると、半日の稼ぎとしては悪くないか。
ただ、ドロップアイテムは運だからなぁ。
それに今回の目的はあくまで魔石だし。
それも明日には目標達成できそうだけどな。
**********
買い取りを済ませた俺は、屋台を適当に回って、よくわからん肉や野菜が混じった串焼きを3本平らげた。
この世界には転移魔術があるので、どこにいても新鮮な食材が手に入るんだよね。
なので、ちょっとした塩やタレで味付けされただけのものでも、素材がいいから結構美味いんだわ。
食事を終えた俺は宿屋へ向かう。
集落とはいえ、泊まりこみで探索する冒険者なんかゴロゴロいるわけだし、そうなると宿屋も必須となる。
結構立派な建物が何棟もあった。
ガイドブックを頼りに、浄化施設と個室寝台のあるところを選んだ。
個室といってもピンきりで、俺が選んだのは広い部屋に寝台を並べてカーテンで区切っただけのところ。
これを個室と言い張るのはどうかと思うけど、仕切りのカーテンに遮光と遮音の魔術がかけられているので、結構快適だったりする。
浄化施設使用1回と朝食がセットで50G。
今日の儲けの3分の1がなくなったけど、しょうがない。
浄化施設なしだと20G安くなるんだが、森の中を走り回って汗まみれの泥だらけになっているので、それは考えられない。
仕切りなしの雑魚寝スペースだともっと安いみたいだが、流石にそれは無理だわ。
ってことで宿屋の浄化施設をさっそく使う。
「ふぅ、すっきりしたぜぇ」
キレイになった武器防具類を《収納》し、寝台へ。
寝台は
受付でシーツとフェイスタオル1枚だけは無料で貸してくれる。
布団と枕は別料金。
うーん、B&Bっつーより
ま、ギルドの寝台に慣れている俺からすりゃ、体伸ばせるだけで充分だわ。
とりあえず寝台に腰掛け、今日の戦いを振り返る。
ダンジョンっつっても、思ってたより大したことなかったな。
なんやかんやで野生の魔物と戦った経験や、カーリー教官の訓練が生きてるって感じか。
あと、ダンジョンモンスターってのは経験値やSPが高めだね。
あんな雑魚ばっかだったのに、レベルは2上がったし、SPに至っては3,000近く稼げたわ。
とくに階層ボスが美味しいんだよな。
ついこないだまでニートやってた俺だが、随分と成長したもんだよ。
しかし俺はソロだから問題ないけど、これ3~4人パーティーだとこの程度の収入じゃあやってられんだろうなぁ。
聞けばダンジョンを訪れる探索者の半数以上が1~3階層をメインに探索してるらしい。
大体1日の稼ぎが300~400Gくらいでそれを3~4人で割るとひとり100G前後。
それだけならまぁ問題ないかもしれんが、宿代やらメシ代やら武器防具のメンテ代を差っ引いたら厳しいだろうなぁ。
俺の場合はお稲荷さんの加護やら成長補正やらがあるからいいんだけど、普通の人は強くなるためにもっと苦労するんだろうね。
ほんとありがたいことだよ。
最近お供えしてなかったけど、また今度油揚げお供えしとこ。
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