2-14 初めての魔物討伐依頼
青銅の槍を借りた俺は、いつもの薬草採取に加えジャイアントラビットの皮10匹ぶん、という依頼を受けた。
依頼ランクはF。
初の魔物討伐依頼だ。
余談だけど、魔物の単位は
この依頼を達成すれば、ランクアップ確定なんだよな、へっへっへ。
いつもどおり採取キットも借り、俺はジャイアントラビットの生息地に向かった。
生息地に向かう道すがら、ちょこちょこと薬草採取もやっておく。
《収納》のおかけで、いっぱいになった袋を収納できるから、すっげー楽ちんだわー。
ちなみに槍も、収納庫に入れてある。
あれ、結構かさばるんだよね。
採取キットは、出したり入れたりでMP消費すんのもアレなんで、そっちは出しっぱだけど。
なんやかんやで、すでに50Gぶんは採取できた。
**********
ジャイアントラビットの生息地に近づいた。
すでに短槍は用意してある。
〈気配察知〉に、ビンビンひっかかってるね。
魔物の生態ってのは不思議なもんで、活動範囲が限られてるうえに、一定以上増えることは、あまりないらしい。
じゃあ活動範囲から一歩も外に出ないかというと、そんなこともないんだけど、一時的に範囲外に出ても、最終的には戻る、みたいな感じで、基本的にはその活動範囲を守るんだと。
生息数も、不思議と一定に保たれる。
数が減ったらすげー勢いで増えるんだが、ある程度の数に達すると、急に増えなくなるんだと。
ただ、ここ数十年は全体的に増加傾向にある、とかなんとかって話は、チラホラ聞いたな。
魔物ってのは、完全に狩り尽くしたと思っても、数日でどこからともなく現れ、増え始める。
活動範囲から魔物を完全に排除するには、その場所の環境を、大幅に変える必要がある。
たとえば、森に棲む魔物がいるなら大規模な伐採を行うとか、池に棲む魔物がいるなら池を埋め立てるとか、そんな感じで。
魔物は乱獲しても絶滅するということがないので、素材はいい感じに安定供給できるから、魔物素材を元にした産業も発達してる。
つまり、魔物狩りを生業にすれば、生活もそこそこ安定するってわけで、魔物狩りをメインに活動する冒険者がたくさんいるんだ。
そんなたくさんの冒険者が、生活のために狩りまくってにもかかわらず、生息地にくれば獲物に困るってことはほとんどない。
「おー、いっぱいいるなー」
〈気配察知〉に引っかかっている数は5匹。
とはいえ、そこそこ広い範囲を察知できるようになっているので、群れってほどじゃない。
ジャイアントラビットは、群れで獲物を襲うということがないので、初心者向けの魔物として、見習い冒険者から好まれているんだな。
だから、この依頼を受けたんだけどさ。
あと、ジャイアントラビットは草食じゃなく、雑食なんだよね。
だから人間も襲います。
念のため《下級自己身体強化》を使って能力を上げ、〈気配察知〉全開で、こちらに気づいてなさそうな奴に、こっそり近づく。
草むらの向こう、死角になっているが、そこに1匹いるのは間違いない。
もう少しで槍の間合いに入ろうかというとき、草むらの向こうからガササという音が聞こえた。
(気づかれた……!)
お互い姿は見えていないが、なんとなく、向こうがこっちに気づいたのは感じ取れた。
腰を落とし、いつでも突きを繰り出せるよう槍を構え、ゆっくりと一歩踏み出す。
――この距離なら届く……!
草の陰にいるであろう、ジャイアントラビットに向けて、思いっきり槍を繰り出した。
だが、槍の穂先が届く直前、ソイツは横に飛び、初撃はあっさりとかわされしまう。
そしてソイツは着地と同時に、草むらから飛び出すように、俺へと飛びかかってきた。
おもいっきり突きを繰り出して、スキだらけになっていたところに、体当たりを受けてしまう。
「ってぇ!」
結構な衝撃を受けたが、装備と魔術のおかげで、思ったほど傷みはない。
「――っく……そぃやっ!」
なんとか踏ん張って体勢を立て直し、敵が着地した瞬間を狙って、槍を繰り出した。
柄を持つ手に、確かな手応えを感じる。
槍の穂先が、ジャイアントラビットの脇腹あたりに刺さったが、致命傷じゃないのか、暴れまくっている。
「クソっ! おい、じっとしてろ!!」
という俺の希望なんぞ、聞き入れてくれるはずもなし。
ジャイアントラビットはひと暴れしたあげく、俺の槍から逃れた。
相当な深手を与えているが、まだそこそこ動き回れるらしく、俺から逃げるように駆けだす。
「待ちやがれぃっ!」
さすが『脱兎のごとく』という言葉があるだけあって、逃げ足速ぇなウサ公め!
〈気配察知〉と、草むらを走る音を頼りに、全力でジャイアントラビットを追いかける。
この世界に飛ばされた日以来の全力疾走だが、いろいろステータスが上がってるおかげで、確実に足も速くなってるし、持久力もついてるな。
万全の状態のウサ公相手なら、逃げられたかもしれないが、相手はそれなりに深手を負っているため、動きは鈍い。
しばらく追い回した結果、俺はなんとかウサ公を間合いに捉える。
「そりゃっ!!」
槍を繰り出して首の裏を槍で貫き、ようやく1匹目を仕留めることができた。
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