2-15 初めての現地解体
ジャイアントラビットとの遭遇から戦闘に追跡と、随分騒いでしまったせいか、〈気配察知〉の範囲内に反応がなってしまった。
せっかくだから、コイツをこの場で解体してみるか。
血抜きをし、内蔵を取り出し、皮をはいで部位ごとに切り分ける。
続いて骨と肉を引き剥がして解体完了。
〈解体〉スキルと解体用ミスリルナイフのおかげで、10分程度で解体できた。
皮を剥いだり、腱を切ってバラしたりすんのが、すげー楽だわ。
クラークさんありがとー!!
さて、内蔵は穴を掘って埋めておく。
その他の部位は《製水》で洗い、皮と骨は《乾燥》。
肉は《冷却》で頑張って冷凍し、まとめて《収納》。
《収納》使用時、収納庫内のどのへんに置くかってのを、指定できる。
庫内に仕切りを作ってあるので、冷凍肉とその他の部位は仕分けられるのだ。
皮と骨も、とりあえず冷蔵庫の方でいいだろう。
「ふぅ。これでよし、っと」
ちょっと苦労したけど、なんとか1匹ゲット。
ただ、ジャイアントラビットは1匹で10G、解体しても15Gなんだよなぁ。
まぁ供給が安定するってことは、価格も安定するってことで、そのぶん儲けも少なくなる、っと。
とくにジャイアントラビットなんて、ほとんどの冒険者が狩れるわけだから、しょうがないんだよね。
Fランク以来だから、ランク制限もないみたいなもんだし。
俺の場合、薬草採取の方が効率はいいんだけど、まぁこれはランクアップ試験だと思って我慢しよう。
**********
その後も〈気配察知〉を頼りに獲物を見つけ、狩りを続けた。
できれば不意打ちで仕留めたいんだが、どうしても寸前で気づかれるんだよな。
結局2時間くらいかけて、ようやくもう1匹仕留めるので精一杯だった。
午前中いっぱいで30G。
薬草採取なら、数倍は稼げるんだけどなぁ……。
俺には〈気配察知〉があるから、発見までの効率は決して悪くない。
悪くないんだが、その後の戦闘がまずい。
槍を持つのも初めてだし、仕方はないのかもしれんのだけど……。
「なんとか気付かれずに済む方法は、ないものかねぇ」
奇襲さえうまくいけば、もっと効率よく狩れるんだよなぁ。
なにがまずいんだろうか?
改めて獲物を見つけた俺は、例のごとく〈気配察知〉全開で近づく。
(あ、魔力の流れってどうなってんだろ?)
ふと、そう思った。
〈魔力感知〉のおかげで、意識すれば、自分の中に流れる魔力は感じ取れる。
(空気中にも、魔素ってのが漂ってんだよな)
いままでちゃんと意識したことはなかったが、集中すれば、確かに自分の周りを漂う、魔力の流れを感じることができた。
――これが魔素ってやつか。
魔術士ギルドの魔素が濃い部屋では、とくに意識しなくとも目に見えるほどだったが、普通はこれくらいの濃度なんだな。
かなり意識しないと、感知できない。
《スキルレベルアップ》
〈魔力感知〉
お、なんかスキルレベル上がった。
そうかー、〈魔力操作〉のことばっか考えてたけど、〈魔力感知〉も大事だよなぁ。
スキルレベルが上がったおかげで、より広い範囲の魔力の流れを、感じ取ることができるようになった。
そうなると気になるのが、獲物の魔力だ。
この世のすべてのものが、魔素を有しているってんだから、魔物だって魔素を宿しているはずだ。
空間を漂う魔素、つまり、自分以外の魔素を感じ取れるんなら、魔物の魔素だって感じ取れるに違いない。
それを感じ取ってどうなるかってのは、実際感じてみてから考えよう。
Don't Think,Feel.ってやつだ。え、ちがう?
集中しろー、集中ぅー……。
t集中を高めていくと、まずは周りに生えてる草や転がってる石ころ、さらには地面を流れる魔力を感じ取れるようになる。
《スキルレベルアップ》
〈魔力感知〉
あぁ、なんか頭がぼーっとしてきた……。
いかんいかん! 集中集中!!
……ん、これは? これがジャイアントラビットの魔素、そして奴の体内を流れる魔力か?
〈気配察知〉とはまた違った形で、獲物を感じることができた。
《スキルレベルアップ》
〈魔力感知〉
おお、なんかすげー勢いで、スキルレベルが上がってんな。
さてと、この状態だと、いままでよりも相手の状態がわかるな。
いまなら確実に、向こうは気づいていない。
ここで細心の注意を払いつつ、近づく……あれ?
なんか俺の魔力、微妙に漏れてね?
漏れた魔力が、空気中の魔素に絡んでんのがわかる。
それが風にのるように拡散していって……、獲物のほうにも流れていってんじゃね?
あ! 気付かれた!! んで逃げられた!!
……なるほどねぇ。
この魔力の漏れを、もうちょっと制御できるようになったら、不意打ちもできそうだな。
「ふうぅ~……」
大きく息を吐くと、急に目の前が真っ暗になった。
なんとか意識を保とうと思ったがダメだった。
気がつけば俺は、街の門の外にいた。
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