2-13 レンタル武器
治療士ギルドでは、回復魔術を覚える以外特筆すべこともなく、俺は冒険者ギルドに戻った。
さくっとディナープレートを食って、寝台に行く。
実は今日、寝る前にやっておきたいことがあるんだわ。
それは〈魔力操作〉のレベルアップ。
寝台なら、最悪MP切れで気絶しても大丈夫だろ。
俺は寝台に寝転がって、体内を流れる魔力を練り始めた。
ステータス画面を見ながらでもできるので、どういうふうに魔力を動かせばMP消費が増えるのか、みたいなことを気にしながら、魔力を練る。
ステータスの概念を知らない、この世界の他の人には、真似できない訓練方法だよな。
少しの量をゆっくり動かすぶんには、ほとんど消費はないんだよね。
早く動かしたり、動かす量を増やしたり、いろいろ試してみる。
MPってのは時間経過で回復するんだが、いい塩梅で魔力を全身に巡らせるようにすると、なにもしてない状態より、MP回復が早くなることも発見した。
ガーッと操作して消費し、魔力酔いに耐えつつ、気絶寸前でMP回復を図る。
その夜はそれをひたすら繰り返していたが、真夜中過ぎにちょっと油断してしまい、MP切れをおこして気絶した。
**********
翌朝、ステータスを確認すると、〈魔力操作〉はLv3になってたよ。
MPも結構増えてた。
魔術士ギルドの寝台で寝てたら、もっと回復してたんじゃねぇかな。
HPとMPって、最大値みたいなのがないから、どこまで回復するのかは不明だけど。
一応冒険者ギルドの寝台だと、疲れは完全に取れるんだけど、それでも日によって寝起き時のHPは上下してたから、体調とかの影響は受けるんだと思う。
さて、昨夜の魔力切れによる疲れもあんま残ってないし、今日は武器レンタルして、狩りに出かけるか!
**********
「うーん……どれにすっかなぁ……」
俺はかれこれ10分ほど、武器防具レンタル表とにらめっこしている。
だって、よくよく考えれば武器なんて使ったことないもんよ。
中学の時に、体育の授業で剣道やったけど、結局竹刀振り回してチャンバラごっこしただけだもんなぁ。
「随分悩んでるねぇ」
受付にいるのは、イケメンリザードマンことフェデーレさん。
「いやぁ、武器なんて使った経験がないんで、どれ選んだらいいかわかんないんですよねぇ」
まあファンタジー=剣と魔法の世界っていうくらいだから、剣を使ってみたいけど、剣ひとつとっても、ショートソードにロングソード、レイピアといろいろあって迷う。
ただ、刃物って何度も切ってたら切れ味が悪くなるっていうから、メイスみたいな鈍器も捨てがたいんだよなぁ。
でも魔物に近づきすぎるのは怖いから、槍もありかなとも思うし、いっそ弓ってのもどうかと思いつつも、さすがにソロで弓は厳しいかぁ、と思ってみたり……。
「ふっふっふ。そんなアナタに『基礎戦闘訓練』!」
「基礎戦闘訓練?」
「そ。ショウスケくんみたいに、戦闘経験がない人なんて、たくさんいるからね。実際、武器なんて使ってみないと、なにが自分に向いてるかなんて、わからないでしょ?」
うん、たしかにその通りだわ。
「だからそんな見習い冒険者のために、ギルドでは基礎戦闘訓練というのを行っているさ」
「へええ」
「ちなみにショウスケくんの場合、Gランクでの依頼貢献度が高いから、きっちり訓練を受ければ、Fランクに上がれるよ」
「え、マジっすか?」
「マジマジ。ギルドランクっていうのは、そのギルドに対する貢献度や信用度を示すって意味合いもあるけど、こと冒険者ギルドに関しては、実力に見合わない高ランクの依頼受注を規制する、っていう意味もあるんだ」
なるほど、いくら自己責任といっても、構成員がバタバタ死んじゃったらギルドのイメージも悪くなるわな。
「基礎戦闘訓練をきっちり受ければ、少なくともF~Eランクの依頼で命を落とす、なんていう危険性はかなり減らせるからね」
俺だっていくら死に戻れるからって、あんま死にたくないってのが本音だし、命を落とす危険性は下げておきたいよな。
「……で、おいくら?」
「1,000Gだよ。ショウスケくんはGランクだけど、特別にローンも可」
「1,000G……」
いま魔術士ギルドと治療士ギルドに、合わせて1,900G借金があるんだよなぁ。
で、再来月から収納庫のレンタル代が、毎月50Gかかるし、できれば早く《下級浄化》も覚えたいからなぁ。
「すんません、基礎戦闘訓練はあと回しで」
「ありゃ、ざんねん」
「とりあえず、今回は青銅の槍でお願いします」
「青銅の槍ね、はい、どうぞ」
レンタル料5Gと引き換えに、青銅の槍を受け取る。
「あ、そうだ、
「んー、いまは節約したいんで、円盾はいいです」
渡された槍は、1mちょいの木製の柄に、30cmくらいの青銅の刃――槍だと
全長1.5m足らずだから、短槍ってやつか。
あとで知ったんだが、冒険者が使う長柄系の武器は、大体この短槍サイズが基本になってるらしい。
森や洞窟なんかを探索することが多い冒険者にとって、2m超えるような長槍は、扱いづらいんだと。
手にとってみると、いい感じの重さだね。
周りに気を使いながら軽く振ったり、突いたりの真似事をしてみたけど、結構扱いやすそうだ。
こっちに来てレベルアップしたり、薬草採取でなにげに身体使ってるから、多少筋力は上がってると思う。
ヒキニート時代の俺じゃあ、軽く振っただけで落としてたかもな。
「ショウスケくん……やっぱ基礎戦闘訓練受けたら?」
いまのちょっとした槍の真似事だけで、俺の戦闘センスのなさが露見してしまったというのか!?
「あはは……。とりあえず弱そうな魔物だけ、相手にするようにしますよ」
……笑ってごまかしとこ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます