2-12 治療士ギルド

 治療士ギルドは、冒険者ギルドと道を挟んで向かいにあった。

 魔術士ギルドは小さかったけど、ここは冒険者ギルドと同じくらいの大きさはあるだろうか。

 聞けば、怪我や病気のための入院設備があるから、かなり広いんだそうな。


 中に入ると、そこは予想通り清潔な空間だった。

 冒険者ギルドや魔術士ギルドも、かなり清潔なところだったけど、ここはまた違った清潔さがあるな。

 ひと言でいえば病院、って感じなんだけどさ。

 だから、ほかのギルドと違って、待合室には一般人らしき人がたくさんいた。

 とりあえず、ギルド会員用の受付に向かう。

 受付の人は、白いローブに身を包んだ、清楚な感じの女性だ。


「本日はどのようなご用件で?」

「えーっと、ギルドへの新規登録とか、回復魔術の習得とかをしたいんですけど」

「では、ギルドカードをお渡しください」


 受付のお姉さんにギルドカードを渡すと、例のごとく台座にカードをはめ、採血される。


「ショウスケ様、いつもお世話になっております」


 ってことは、やっぱ薬草採取で貢献してるのかな?


「ショウスケ様は、薬草採取などで、当ギルドの依頼をすでに数多くこなされておりますので、登録料は免除、Fランク治療士として、登録が可能です。このまま、手続きを進めてよろしいですか?」


 このお姉さん、スラスラ話すね。

 そのあと、治療士ギルドの説明もしてくれたが、まあ他のギルドの治療士版ってことで、とくに気になることはなかった。

 声がキレイで、滑舌も抑揚もいい感じだから、すーっと言葉が頭に入ってくる。

 なんやかんやでお姉さんが手続きを済ませ、カードをいったん返してくれた。


「はい、登録作業は終了しました。魔術士ギルドで、基礎魔道講座は修了されているようですので、ご希望でしたら、回復魔術の習得に移らせていただきますが?」

「よろしくお願いします」


 回復魔術の料金表を、出してもらう。

 やっぱ高ぇなぁ。


「なにかお得なセットとかってあります?」

「ございますよ。ショウスケ様はソロの冒険者様ですか?」

「はい」

「でしたらやはり『冒険者基本パック』でしょうね」


 あ、ここは魔術士ギルドと同じ名前なんだ。


「《下級自己回復》《下級自己解毒》《下級自己身体強化》の3点で1,000Gとなっております」


 おおっと、魔術の方は8つなのに、こっちは3つで1,000Gか……。

 個別だと合わせて2,500Gだから、半額以下にはなるんだな。

 魔術士ギルドほどのお得感はないけど、まあいいや。


 正直〈毒耐性〉がある俺に、《解毒》関連が必要かは悩みどころだけど、じゃあここから《下級自己解毒》引いても、結局1,000G超えるんだよな。

 《下級自己回復》単品で800Gかかるわけだし、パックでいっとくか。

 ……とその前に。


「すいませんが、ローンは組めますか?」

「はい。Fランク治療士の方は、1,000Gまでのローンが可能です」


 お、やっぱそうか。


「あ、魔術士ギルドでも、まだローンが残ってるんですか……」

「問題ございませんよ。他ギルドとは別枠でご利用可能です」


 よっしゃ!


「ではこの『冒険者基本パック』をお願いします」

「かしこまりました」


 そのあと、俺は別の人に連れられて習得部屋に行き、無事下級自己回復《下級自己解毒》《下級自己身体強化》を習得した。

 この回復系魔術とか補助系の魔術は、《聖》属性という複合属性だ。

 《光》をメインに、《地》《水》《火》《風》四元素属性を混ぜ、ほんのちょっとだけ、《闇》のエッセンスを加えると、《聖》属性のできあがりって寸法だ。


 人体は四元素で構成されているといわれ、そこに原初属性を加えることで、人体に影響を与える《聖》属性になるのだとか。

 なんだかあれだね、DNAがATCGの4つの塩基で構成されてるってのに近いね。

 あと《聖》属性には、けがれをはらう魔術もあるらしいんだが、いまは必要ないな。


 訓練施設もあるようなので、とりあえず練習だけさせてもらい、ちゃんと使えることを確認した。

 まず《下級自己回復》は、ちょっとした“自分の”怪我の治療が可能。

 生活魔術の《血止め》と併用すれば、切り傷や擦り傷にはほぼ対応できるらしい。

 骨折は直せないのだが、ちょっとしたヒビなら効果あり。

 骨折の場合も、うまく骨接ぎすれば、ある程度治療は可能だとか。


 ちなみに、他人の治療ができる《下級回復》は、お値段3,000Gナリ。

 ただ、一定期間治療士として働くことを条件に習得できる。

 まあ、当分はソロのつもりだし、必要ないだろ。


 《下級自己解毒》は、その名前から想像できる通り、ちょっと弱めの毒を無効化出来る。

 食あたりにも効果はあるけど、食中毒レベルだとちょっと厳しいらしい。

 あと、即効性のある毒には、ほとんど効果がない。

 これも他人を治療できるやつは高いけど、治療士ギルドでの労働を条件に習得が可能。


 《下級自己身体強化》だけど、これは使えばなんか体が軽くなって、いつもよりよく動ける感じがする。

 試しにステータス画面見てみたら、《物攻》《物防》の基本値と、《体力》《素早さ》《器用さ》が、ちょっと上がってたよ。

 これは結構使えそうだな。

 これも他者に使える《下級身体強化》になると、3,000Gとお高くなっております。


 まあ、この冒険者パックは“最低限自分の面倒は自分で見ましょう”って理念が元になってる感じやね。

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