2-11 暦と時間と度量衡
収納屋を出た俺は、いったんギルドに戻り、いつものように食堂で日替わりランチを注文する。
「あれ、今日は人少ないね」
正午に近い時間で、いつもならごった返してるのに、今日は半分以上空席だった。
「今日は無曜じゃからの」
カウンターにはいつもの元気なオッサンじゃなく、ちょっと覇気のないじいさんがいた。
「ああ、それでか」
いつもより人が少なく、思いの外静かだったので、メシでも食いながら、いろいろと情報の整理をすることにした。
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まずは暦のこと。
収納庫の契約が月極めなので、そのへんのところはしっかり理解しておかないとな。
この世界にも1週間という概念がある。
ただ1週間は7日じゃなく8日で、七曜の代わりに八曜がある。
まぁ八曜とか曜日ってのはたぶん、〈言語理解〉さんがいい感じに翻訳してくれてるんだろうけど。
で、各曜日だが、属性が割り当てられている。
《地》《水》《火》《風》の曜日が平日、《空》曜日が半休、《光》《闇》曜日は一応平日で《無》曜日は全休って感じ。
ギルドは年中無休だけどね。
とはいえ“無曜は休み”って認識はみんな持ってるから、職員はともかく、冒険者は休みをとる人が多いみたい。
あと、《光》と《闇》の曜日は、イベントに割り当てられることが多く、光曜に結婚式なんかの祝いごと、闇曜に葬式なんかの忌みごとを行うのが一般的なんだとか。
とはいえ、そこまで厳格に決められてるわけじゃないから、例えば闇曜を休んで無曜と合わせて連休をとって行楽に出かける、とかはみんな普通にやってるみたいね。
そして一ヶ月は28日。
一年は13ヶ月で、年始めに0月0日ってのが入って365日。
4年に1回の閏年、みたいなシステムはないみたい。
月の数え方は普通に1
次に時間だが、1日を12分割したひと区切りが『刻』。
時刻の場合は「こく」といい、時間を表す場合は「とき」という。
この1刻が大体2時間って感じかなぁ。
このへんの翻訳は2時間ひと区切りってことで、俺の中途半端な時代劇知識が影響してんのかなぁって思うけど。
じゃあそれより短い単位はというと、なんと『分』や『秒』も存在する。
1刻を120分割したのが1分で、1分を60分割したのが1秒。
分と秒に関しては、元の世界の感覚に近いから、使いやすいんだけどね。
ただ、こっちの世界の1秒と元の世界の1秒が、ぴったり同じかっていうと、どうなんだろうね。
多少ずれがあっても、体感じゃわかんねぇや。
この分と秒については、ちょっと都合が良すぎると思ってんだよなぁ。
実際こっちの世界でも、秒刻みの時計を見たことあるから、うまいこと翻訳されてるってわけでもないみたいだし。
もしかしたら、なんだけど、俺より前にここに来た異世界人がいたりすんじゃねぇの? って思っていろいろ聞いてみたら、やっぱそれっぽい感じだった。
500年ほど前に現れた、『賢者サンペー』ってのが提唱したらしい。
名前からして、ちょっと怪しいよね。
このサンペーって人は、当時大飢饉で滅亡寸前だったこの世界に、農業革命を起こした人なんだとか。
そのときに、いろんな知識をこの世界に残していった。
勝手な推理だが、異世界人の内政チートってやつじゃないかなと、思ってんだ。
こっちの世界で500年前っつっても、時間の流れが違うとかで、実は現代人じゃないかと俺は思ってるんだよねー。
ややこしいのが、1刻120分てところかな。
まぁこのへんは、慣れればなんとかなりそうだ。
度量衡も賢者サンペーが残していて、なんとメートル法が採用されている。
温度も摂氏だしな。
長さの基準は、サンペーが持っていた『神の
ただし、転移したとき、にたまたま持ってた安物の定規とかだと、その正確性に疑いはあるけどね。
温度は摂氏だから、水の融点を0℃、沸点を100℃として刻んでいくわけだ。
この摂氏てのは確か、1気圧下ってのが基準だったがはずだが、正直こっちの世界と向こうの世界の気圧が同じかどうかなんて、わからんのだよね。
で、4℃の水1
体感的にはあんまかわらんし、特に不便は感じないから、細かいところは気にしなくていいか。
最初の内は、〈言語理解〉さんが上手いこと翻訳してくれていると思ってたんだが、まさかメートル法が採用されているとはね。
いろいろ考えごとをしてたら、昼食どきが終わったのか、食堂はほぼ空席になった。
中途半端に残っていた料理を、一気に書き込んで食器を返したあと、2階の洗面所で歯を磨く。
さて、午後から何をすべきか……。
よし、どうせなら治療士ギルドに行くか。
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