2-10 初めての収納

 翌朝まだ薄暗いうちに目を覚ました俺は、軽くうがいだけを済ませたあと、新たに浄化済みのコップを手に取り、試しに『製水』を使ってコップを水で満たしてみる。


「お、いい感じだな」


 量の調節もうまくいき、早速飲んでみたところ、味にも問題はなかった。

 寝台に戻った俺は、久々にステータスを確認した。


――――――――――

名前:山岡勝介

職業:薬草採取士

レベル:7


HP:218

MP:87


物攻:F(F)

魔攻:F-

物防:E-(F)

魔防:F+(G+)

体力:E-

精神力:F+

魔力:F-

賢さ:E

素早さ:G+(F-)

器用さ:F-

運:F-


【所持金】

現金:50G

カード:68G


【装備】

革のベスト(ゴブリン):物防G /魔防G-

革のズボン(ゴブリン):物防G+ /魔防G-

革のジャケット(オーク):物防F- /魔防G+

蜘蛛糸のシャツ(Gスパイダー):物防G /魔防G

革のショートブーツ(Gボア):物攻G- /物防G /魔防G- /素早さDOWN


【所持アイテム】

歯ブラシ

洗口液

革のポーチ

麻の背嚢

傷用軟膏×3

タオル

雑巾×2

解体用ミスリルナイフ:物攻C /魔防UP /器用さUP


【称号】

Gランク冒険者

Fランク魔術士

薬草採取士:薬草判別効率UP /薬草採取効率UP

解体講座修了者:解体効率UP

基礎魔道講座修了者:魔術効率UP


【スキル】SP:312

稲荷の加護

言語理解

恐怖耐性:Lv2

毒耐性:Lv1

気配察知:Lv2

空腹耐性:Lv3

草刈鎌術:Lv1

野鋏術:Lv1

掬鋤術:Lv1

魔力感知:Lv1

魔力操作:Lv2

解体術:Lv4

生活魔術:Lv3


【スタート地点】

トセマの街 西門

572/07/03

07:072:23

――――――――――


 お、レベルが上ってんな。

 いや、ジャイアントラビットを倒したときに1回上がったんだけど、それ以上に上がってるってことは、解体とか魔力操作とかそのへんが影響してんのかな?

 俺、結構通知見逃してんもんなぁ。


 MPと魔力が一気に上がったのは、やっぱいろいろ習得したからだろうな。

 あ、なんか解体用ミスリルナイフは、持ってるだけで魔防が上がんのな。

 っつーか物攻Cってすげーな。

 戦闘で使うつもりはないけどさ。

 しかし物防の基本評価がFにもなると、G-のショートブーツじゃあ補正はかからなくなるんだなぁ……。

 

 よし、スキルもしっかり確認しとこう。


 〈魔力操作〉はぶっ倒れるまでやったからスキルレベル上がってんな。

 〈解体〉は徹夜で頑張った成果が出てるぞ、よしよし。

 〈生活魔術〉は、単純に習得魔術数が多いから、レベルが上がってんのかな。

 〈生活魔術〉のとこに意識集中したら、習得魔術も確認できるね。

 こりゃ便利だ。

 あぁ、でも魔術はSPじゃ習得できないみたいだ。


 そういやスタート地点は一昨日おとといジャイアントラビットを狩って帰った時のままだな。

 もしかしてだけど……、いま死んだら借金チャラで、魔術は覚えてるって状況になるんじゃね?

 …………………いや、やめとこう。

 正直そこまで割り切れねぇわ。

 

 さて、できれば収納庫の契約や、治療士ギルドにも行きたかったけど、借金も増えたし、とりあえず薬草集め行こう。


「ふっふっふ……今日はほくほくだな」


 朝から日暮れまで、みっちり薬草採取に勤しんだおかげで、なんと今日は200G近く稼いだぜ!!

 なんか気合入れて採取してたら、半日くらいたった時点で〈採取〉スキルを習得した。

 おかげで午後からは、一気に効率が上がったんだよな。

 ダジギリの根をメインに集めたので、さっそく魔術士ギルドに100G返済できたよ。


 さて、100Gほど余裕ができたので、とりあえず明日は収納屋に行くことにしよう。

 利用料次第じゃ、すぐに契約してもいいな。


**********


 ハリエットさんからもらったチラシの地図を頼りに、収納屋を訪れた。

 街の中心部から少し外れていたんだが、結構大きな建物だったのですぐに見つかった。


「いらっしゃいませ」


 出てきたのは、小太りのおっさんだった。


「本日はどのようなご用件で?」

「えーっと、収納庫を借りたいなと思いまして」

「それはそれは、毎度ありがとうございます」


 俺はオッサンに連れられて、地下に降りる。

 なんでも温度管理の関係上、安い収納庫は地下にあるんだそうな。

 ちなみに、施設の地上部分は5階建て。

 地上階の収納庫は、温度管理やら時間経過管理、空間拡張みたいな魔術オプションがついてるものがほどんどで、かなり利用料は高くなるみたい。

 そんなわけで、とりあえずお手頃なのを希望したら、地下に案内されたのだった。


「お客様は、冒険者様ですかな?」

「ええ、まあ」

「たとえば、武器はどういったものをご利用で?」

「あー、いまは薬草採取をメインでやってるので、ちゃんとした武器は持ってないんですよね」

「そうですか。今後武器を扱うご予定は?」

「一応魔物狩りも、そろそろ始めようかとは思ってます」

「ふーむ、では冒険者様におすすめしている、こちらのタイプはいかがでしょうか?」


 案内されたのは元の世界によくあった、縦長のロッカーくらいのものだった。

 おおよそだけど、高さが180cm、幅と奥行きは30cmって感じか。


「これでしたら槍でも剣でも収納できますし、皮や牙、骨なんかの素材も、問題なく保管できますよ?」

「肉とかはどうでしょう?」

「そうですねぇ。冷却魔術はご利用で?」

「あ、使えます」

「でしたら、もうひとつ下の階の収納庫をおすすめしております。冷凍機能はありませんが、一応階層全体が10℃以下に保たれておりますから、1~2日くらいなら、保管可能ですな。もちろん、冷凍機能付きの収納庫もありますが、少々お高くなっております」

「じゃあ冷蔵のほうも、見せてもらえますか?」

「もちろんですとも」


 おっさんに連れられ、さらに下の階層におりる。

 さっきの階は涼しかったけど、この階は正直寒いわ。


「こちらでございます」


 今度はコインロッカーみたいな感じかな。

 間口が約30×30cmと小さいが、奥行きが90cmほどある。


 まあ間口から取り出すわけじゃないし、奥行きが多少あっても問題はないんだろうな。


「ちなみに料金は……?」

「先ほどのものもこちらも、月額30Gでございます。両方セットにされると、50Gとお得になりますよ?」


 月50Gか……、無理な額じゃないな。


「さらにいまですと、初月無料キャンペーン中でございます」

「え? じゃあ支払いは来月から?」

「そうしたいのは山々ですが、料金は先払いでお願いしております。最初に50Gお支払いいただくと、来月末までご利用可能となっております」


 いまはまだ、月の初めごろだったよな、よし。


「えーっと、ギルドカードで支払えますか?」

「もちろんですとも! カード決済でしたら、自動引き落としも可能でございますよ?」


 おお! 便利だ!!


「では、さっきのとこれの、セットでお願いします」

「毎度ありがとうございます!」


 オッサンにカードを渡すと、収納庫の窪みにカードをはめ込み、なんらかの手続を行った。

 お、なんか『収納』が使えそうな気がするな。

 上の階層に戻って、縦長タイプのほうでも、手続きを終わらせた。


 試しに巾着から洗口液を取り出し、『収納』してみる。

 なんとなくイメージで、どっちの収納庫の、どのあたりに入れるのかもわかるな。

 まずは縦長の方に、っと思ったら持っていた洗口液が消えた。


「おや、さっそくお試しですかな?」

「ええ。『収納』は初めて使うので、試しに」


 消えた洗口液だが、ちゃんと縦長のほうに入っているのが分かる。

 取り出そうと思ってみると、手の中に洗口液が現れた。


「ほほう、初めてとおっしゃられたが、なかなかお上手なようだ」

「どうも」


 今度は、冷蔵庫のほうに入れてみる。

 そして再び取り出すと、表面がちょっとだけひんやりしていた。


「どうやら上手く使いこなせそうですな」

「ええ、そうですね」

「ぜひご活用くださいませ。引き落としは月末ですので、残額にはご注意ください。ああ、それから末日が空曜と無曜の場合は、翌日引き落としとなりますので、その点もご注意を」


 無事『収納』を使えるようになった俺は、収納屋をあとにした。

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