第304話、LAST BOSS・『Atle・za・ture・O-VAN』④/ばいばい、アンドロイド
この世界に『Atle・za・ture・O-VAN』の本体がいる。世界の中心、世界の核。
今は外の世界と切り離されている。でも、外部との経路が修復されたら終わりだ。いくらアクセスの力でも経路を見つけることはできないかもしれない。
さすがアンドロイドの思考そのもの。今までの相手とは次元が違う。
でも、負けるわけにはいかない。
「ごま吉ミサイル!! ジュリエッタミサイル!!」
「「「「「もっきゅぅぅ!!」」」」」
「「「「「きゅぅぅぅっ!!」」」」」
俺は周囲のオストローデシリーズを、無限に増殖させたごま吉とジュリエッタをミサイルのように飛ばして破壊する。この世界でしかできない攻撃だ。
それだけじゃない。戦乙女型から始まり、今まで出会った人や仲間たち、生徒たちを具現化してオストローデシリーズと戦わせている。
「くっそ、本体……本体はどこだ!?」
敵を任せ、俺は地面に手を付ける。
だが、手ごたえが今までと違う。地面の下に広がるのは、何千何万と広がる蜘蛛の糸のような細い何か……くそ、この野郎!!
「ダミー回路……!!」
『そうだ。わたしが修復中の回路がわかるかな?』
「この野郎!!」
数千、いや数万……数億あるかもしれない。その中からたった一つの回路を見つけないと。
外部との通信回路……ミスった。最初に切断した時点で『Atle・za・ture・O-VAN』を破壊するべきだった。こいつの核の破壊と同時に外部との通信回路を切断するべきだった。今更遅いけどな……。
「ちくしょう、このままじゃ」
『申し訳ないが、外部通信回路の修復が完了したら全データを転送する。きみは負けたのだよ……センセイ』
「くそ……諦めるか!!」
探せ。
この数十億本のダミーの中から、たった一本の通信回路を。
この回路を探しつつ、『Atle・za・ture・O-VAN』の本体の位置を探せ。そして、同時にシャットダウンさせるんだ。
無理ゲーすぎる。
でも、やるしかない。
この戦いを完全に終わらせるために、やるしかない。
「見てろ……俺だってやるときゃやるんだ!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『センセイ、きみは一人じゃない』
『ええ、そうね……頑張りすぎちゃダメよ?』
「へ?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺の隣に、誰かが立っていた。
見覚えがある。若かりし頃のオーディン博士と、code00ワルキューレだ。
おかしいな……この二人を作ったっけか?
『それにしても、君らしい……あらゆる機械を殺す『
『ふふ、それがセンセイの優しさじゃない?』
『そうか……私にはないモノだ。それがセンセイの力であり、私が到達できなかった『機械仕掛け神ヤルダバオト』が認めた理由なのかもしれん』
俺を無視し、二人はのんきに会話している。
頭が付いて行かない……えっと、なんだこれ?
『これが、正真正銘最後だ。センセイ』
「はい?」
『大いなる機神の力が、我々に最後の力をくれたのだよ。センセイを手伝えとね』
『私もお手伝いするわ。せっかくだし、暴れちゃおうかな?』
ワルキューレの身体が蒼い炎に包まれたかと思うと、過去の映像で見た戦乙女型……code00の姿になり、ショートソードを構えてオストローデシリーズに突っ込んでいった。
『さて、あちらは妻に任せよう。私たちは『Atle・za・ture・O-VAN』を止めるんだ』
「……は、はい」
『ふ、こうして一緒に戦うのは初めてだ。よろしく頼むよ』
「…………」
たぶん、これは奇跡だ。
オーディン博士と俺、二人の機神の御手が地面に触れる。そして、アクセスの力が二倍、三倍……いや、二乗、三乗になる。
『な、なんだこれは……!?』
『久しいな、『Atle・za・ture・O-VAN』……産みの親として、責任を取りに戻ってきた』
『あなたは……まさか、オーディン!?』
『そうだ。ふふ、人間のように驚くとは、成長したな』
『おのれ……』
この世界に響く『Atle・za・ture・O-VAN』の声。
人間のように悔しがり……世界に異変が生じた。
『見つけたぞ、センセイ』
「俺も見つけた……核だ!!」
オーディン博士は外部との通信回路、俺は『Atle・za・ture・O-VAN』の核。
互いに視線を合わせ、同時に力を込める。
そして─────爆ぜた。
『dnjblfjbkKASMNK:DL/;M\,:QMS@!?!?』
世界がぶれた。
『Atle・za・ture・O-VAN』の核に亀裂が入った。そして、オストローデシリーズがドロドロに溶け、一つになっていく。
地面に亀裂が入り、縞々模様のボールが現れた。そして、ドロドロになった銀色の液体が縞々ボールと一体化していく。
『あれが核。本体だ』
ワルキューレが戦乙女の姿で俺の隣に立つ。
『さぁ、決めるのはあなた……』
「……ああ」
『Atle・za・ture・O-VAN』は、もはや思考できない。脳に甚大なダメージを負い、喋ることも考えることも何もできなくなった。
最後に、こいつを破壊して終わる。外部にデータが漏れることもない。
俺はゆっくりと『Atle・za・ture・O-VAN』に近付いた。
キルストレガを抜こうと思ったが、俺は一本の大剣、『乙女神剣エクスカリヴァーン・アクセプト』を具現化して構えた。
「じゃあな、『Atle・za・ture・O-VAN』……未来は、人とアンドロイドに任せろよ」
俺の全力の一閃が、『Atle・za・ture・O-VAN』を両断した。
『──────────』
核が破壊された『Atle・za・ture・O-VAN』が、バラバラと細かい粒子になって崩れていく。データ転送ではない、この世界から完全に消滅していく。
それを最後まで見守り─────『Atle・za・ture・O-VAN』は、風のように消えていった。
こうして、戦いは終わった。
俺は、アンドロイドと人間の戦いに終止符を打った。
そして─────。
『よくやってくれた。センセイ』
「オーディン博士……」
オーディン博士とワルキューレさんの身体が、少しずつ薄くなっていた。
『長い戦いが終わり、ようやく私たちも休める……本当に、感謝してる』
『ありがとう、センセイ』
「……いや、そんなことない。感謝するのはこっちのほうだ」
死人にまで手伝わせちまったからな。
感謝してもしきれない。
『君は、最後まで『
「そんなことない。あんたは優しいよ……じゃなきゃ、娘たちからあんなに慕われないだろうさ」
『娘……そうだな。最後に頼みがある、娘たちを任せていいだろうか』
「ああ。ちゃんと、あいつらがお嫁に行くまで面倒見るさ」
『なら、私からの最後のプレゼントだ。これをどう使うかはセンセイの……娘たちの意志に任せよう』
「へ?」
オーディン博士は俺の手を握る。すると、とんでもないイメージが流れてきた。
マジか、これって……うそだろ?
すると、ワルキューレが手を差し出したので握手する。
『センセイ。娘たちを……よろしくお願いします』
「はい。わかりました」
『センセイ、あなたに会えてよかったわ。ふふ、ずっと気になってたの……あなた、小さな頃のロキにそっくりなのよね』
「え」
『あの子も待ってる……頑張ったねって、頭を撫でてやらないと』
「…………」
なんとなく、察した。たぶんロキはもう……。
そして、ついに別れの時が来た。
「オーディン博士、ワルキューレさん、本当にありがとうございました!! 娘さんたちは俺が面倒見ます。だから─────」
オーディン博士とワルキューレさんは、微笑みながら消えた。
だから、ゆっくり休んで。
そう言いたかったけど、別にいい。全てから解放された二人はきっと、天国でのんびりするだろう。ロキ博士も一緒に……。
「……さて、帰るか」
俺の戦いは、おしまい。
これから、新しい戦いが待っている。
でも、その前に……すべてが終わった喜びを堪能したいな。
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